第一章

アルファベット

1. パーリ語のアルファベットは 41個の文字からなります。 つまり、母音 6個、二重母音 2個、子音 32個、 それから、ニッガヒータ (niggahīta) という、鼻音を表す補助記号です。

2. 母音は短いものと長いものに分けられます。短い母音は a, i, u、 長い母音は ā, ī, ū です。

3. 長い母音の長さは、短い母音の約二倍です。ですから、 長い母音を発音するには、短い母音の二倍の時間がかかります。

4. 長い母音は、その上に横棒を書いて表します。韻律的には、 上に挙げた三つの長母音だけでなく、結合子音 (二重子音) が後ろに続く短母音も長いです。 たとえば、bhikkhu, raṭṭha, puppha において、 長いのは kkh の前の iṭṭh の前の apph の前の u です。 (訳註: 母音自体が長いのではなく、後続の子音の発音時間を考慮すると全体として長くなるということです)

a, i, u の後ろに (ニッガヒータ) が続くときも、韻律的に長いです。たとえば、 pupphaṁ (花)、cakkhuṁ (目)、kapiṁ (猿)。

5. 二つの二重母音とは、eo のことです。これらはいつも韻律的に長いです。 これらは文法的には二重母音なのですが、実際には違います。 というのは、これらは二つの母音が合わさって、縮約されてできたもの (a + i = e, a + u = o) だからです。現実には、また実際的には、 これらは単純母音です。

6. 子音は 25個の黙音と、5個の半母音と、1個の歯擦音と、1個の気息音に 分けられます。25個の黙音は、発音に使う場所と発音の仕方によって、 各々 5個ずつの文字を持つ 5個のグループに分けられます。

下の表は、全ての文字を一目で分類したものです。

子音
黙音
無声音有声音無声音有声音
無気音帯気音無気音帯気音鼻音流音気息音歯擦音母音二重母音
喉音 kkhggh h a, ā
口蓋音cchjjhñy i, īa+i = e
舌音 ṭhḍhr, ḷ
歯音 tthddhnl s
唇音 pphbbhmv u, ūa+u = o

7. は、今は一般的に半母音と考えられています。これは流音で、 l に修正を加えた字です (訳註: ローマ字ではなく、ネーティブの文字の話です)。 palm-leaf MSS では、l は絶えず入れ替わります。 の代用であることは、まれではありません。これは舌音です。 なぜなら、そのグループの文字 (ṭ, ṭh など) と同様に発音されるからです。

8. ニッガヒータ は正確に言うとどのグループにも属しません。 これは単に、短い母音の後に続く鼻息の音です: aṁ, iṁ, uṁ

9. 喉音は、喉で発音するのでそう呼ばれます。
口蓋音は、舌を口蓋前部に押し付けて発音することからそう呼ばれます。
舌音は、反り上げた舌の先を口蓋後部に接触させて発音されます。
歯音は、歯を補助に使って発音するのでそう呼ばれます。
唇音は、唇を使って発音されます。
鼻音は、鼻を通して鳴らされます。
歯擦音は、スーという音、
気息音は、帯気した強い息の音です。
黙音は、母音が続かないと発音できないことからそう呼ばれます。
無声音は、声を伴わない音、
有声音は、抑制された声を伴う音です。
流音は、他の子音と結合しやすいです (おそらく を除く)。
帯気音は、強い息、つまり h の音を加えて発音します。
無気音は、自然に、力を入れず、h の音を入れずに、発音します。

発音

10. 母音: 以下のように発音します。

a ア、ā アー
i イ、ī イー
u ウ、ū ウー
e エー、o オー

11. 子音:

注意: 全てのケースにおいて、帯気音は、無気音と同じように発音します。 帯気音は、無気音に加えて強い h の音を伴うだけです。 ですからここでは無気音の音だけを挙げます。

k カ行、g ガ行、 (カ行・ガ行の直前の)ン
c チャ行、j ヂャ行、ñ ニャ行
t タ行、d ダ行、n ナ行

th は英語のような音 (the, thin, など) に決してならないので注意してください。 th は単に t を強く発音した音です。

p パ行、b バ行、m マ行

ph は単に p の帯気した音であって、 英語 (philosophy など) のように f と発音してはいけません。

y, r, l, s, h は、対応する英語の文字と同じように発音します。

v は、子音の後ろにくるとき以外は ヴァ行のような音です。しかし、 子音 + v の場合、ワ行のような音になります。ですから tvā は トゥワー と発音します。

ニッガヒータ は、単語の末尾にしか現れません。 その発音は、ビルマでは口を閉じたンの音、 セイロンでは ング と発音するときのンの音です。

結合子音

12. 二つの子音が隣り合うと、結合子音、もしくは二重子音と呼ばれるものになります。 例えば、vassa, kattha, pandāpeti において、ss, tth, nd が結合子音です。

13. 同じグループ (vagga) (= 黙音の五つの種類: 喉音、口蓋音など) の文字のみが、 隣り合って結合子音になれます。また、上の表で一・二列目同士、三・四列目同士でのみ 結合します。五列目 (鼻音) は、そのグループの他の四つの子音のいずれとも結合できます。

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