529. 不変化詞という用語には、文法的な語尾変化をしない語が全て含まれます。 つまり、副詞、接頭辞、前置詞、接続詞、間投詞 です。
530. 副詞は、三つに分類できます。
531. (a) この種の副詞は、代名詞・名詞・形容詞の語幹に、何らかの接尾辞を付けて作ります。
(b) 「数詞から派生した副詞 (279)」、「代名詞の派生語 (336)」はここに分類されます。 ここで、これら二つの副詞の記述を読み直してください。
(c) 接尾辞 to (346) は、前置詞、名詞、形容詞に付けられて、 非常に多くの副詞ができます。to は奪格の格語尾 (120) ですから、 このようにして作られた副詞は、奪格の意味をもちます。
(i) 前置詞から: abhito (近くに)、parato (さらに)
(ii) 名詞から
(iii) 形容詞から: sabbato いたるところに
(d) 場所を表す接尾辞 tra, tha (346) は、形容詞にも付きます: aññatha, aññatra (別の場所に)、 sabbatha (いたるところに)、ubhayattha (どちらの場所にも)。
(e) 接尾辞 dā (345) も同様に、形容詞、数詞にも付きます: ekadā 一度、sadā = sabbadā いつも。
(f) dhi は dhā (28,283) と同様に使われます: sabbadhi いたるところに。
(g) 接尾辞 so, sā (122,c,d) も同様に、副詞を作ります: bahuso (甚だ)、atthaso (意味に従って)、balasā (強制的に)
(h) iti (347) は、引用の不変化詞として広く使われます。 しばしば ti と短く言われます (「構文」を参照)。
532. (a) 代名詞・名詞・形容詞の、いくつかの格形は、副詞的に用いられます。
(b) 対格: この格は非常によく副詞として使われます。 代名詞の対格からは: kiṁ (なぜ?)、taṁ (そこで)、idaṁ (ここで)、yaṁ (なぜなら)。
(c) 名詞の対格から: divasaṁ (日中)、rattiṁ (夜中)、raho (密かに)、saccaṁ (本当に)、 atthaṁ (…の目的で)。
(d) 形容詞の対格から: ciraṁ (長い間)、khippaṁ (素早く)、mandaṁ (愚かに)。
(e) 語源のはっきりしない副詞の中には、ずっと昔に使われなくなった 名詞・形容詞の対格形だと分類できるものがあります。たとえば: mitho, mithu (互いに)、araṁ (ただ今)、sajju (すぐに)、tuṇhī (静かに)、 alaṁ (充分に)、sāyaṁ (晩に)、isaṁ (少し、いくぶん)、jātu (確かに)、bahi (外で)
具格: この格もよく副詞として使われます。
代名詞の具格から: tena (だから)、yena (なぜなら)。
名詞の具格から: divasena (一日で)、māsena (一か月で)、divā (昼間は)、sahasā (突然)。
形容詞の具格から: cirena (長い間)、dakkhiṇena (南に)、uttarena (北に)、antarena (間に)。
与格: 与格が副詞的に使われるのは、以下に限られます: atthāya (…のために、…の目的で)、cirāya (長い間)、hitāya (…の利益のために)。
奪格: 奪格は、よく副詞的な意味で使われます。特に、代名詞の場合はよくあります: kasmā (なぜ?)、yasmā (なぜなら)、tasmā (だから)、 pacchā (後ろで)、ārā (遠くで)、heṭṭhā (下で)
属格: 属格が副詞的に使われることはまれです。代名詞からは kissa (なぜ?)、 形容詞からは cirassa (長い間)、名詞からは hetussa (原因があって)。
処格: 処格は非常によく副詞的に用いられます: bāhire (外で)、dūre 遠くで、avidūre (遠くないところで)、samīpe, santike (近くで)、 rahasi (密かに)、bhuvi (地上で)
ここに分類される副詞は、派生で得たものでも、格形でもないものです。たとえば:
以上の不変化詞は、文法学者には nipātā と呼ばれます。 nipātā は二百個ほどあります。
動詞接頭辞は、(514) ですでに扱いました。
(a) a (母音の前では an): …でない、…なしで。
(b) du (母音の前では dur): 悪い、下手な、難しい。
(c) su: 良い、上手な、簡単な。du と逆の意味です。 過剰、容易、秀逸を意味します。
注意: du の後ろの語が子音で始まる時は、その子音は一般的に 重ねられます。これは、su の後ろではまれです。
(d) sa: sam (516) の代わりに使われます。 所有、類似、…とともに、…のように、…を含んで、を意味します。
注意: 接頭辞 sa は、接頭辞 a, an の対義語です。
533. すでに見たように、動詞接頭辞は、正しくは前置詞であって、 動詞だけでなく名詞と一緒にも使われます。
534. 名詞とともに、前置詞的な意味で使われる副詞もたくさんあります。 (ii) 格形副詞は、おそらく -to の形のもの以外は、 前置詞として使われることはまれです。
535. 前置詞や、前置詞的に使われる語は、主格・呼格以外の いずれの格をも支配することがあります。
536. 動詞接頭辞となる前置詞が名詞を支配するときは、 その名詞の格は一つか二つに決まっていることがほとんどです。
537. 前置詞や前置詞的副詞とともに用いられる格は、ほとんどが 属格、具格、対格のいずれかです。
支配される名詞なしに使える前置詞は、ほんの少しだけです。 例については「名詞の構文」をご覧ください。
538. はっきりと接続詞といえる不変化詞は非常に少ないです。主なものは:
(a) 連結接続詞: ca (~と、また、しかし、~も)。これは文頭には決して使われません。 atha (そして、さらに、今)、atho (そしてまた、さらに)
(b) 離接接続詞: vā (文頭には使われません), uda, uda vā, vā ... vā (または)。 yadi vā (…であろうと)。yadi vā ... yadi vā (…であろうと…であろうと)。 atha vā (あるいはまた)。na vā (…でもない)。tathā pi (それにもかかわらず)。
(c) 条件接続詞: yadi, sace (もし)、ce (文頭には来ない) (もし)、 yadi evaṁ, yajj'evaṁ (もしそうならば)。
(d) 原因接続詞: hi (というのは、なぜなら、確かに)
ahaha 「はあ (嘆き)」、 aho 「おお (驚き)」、 aho vata 「おお (驚き)」、 are 「おら (興奮、悪態)」、 dhi, dhī 「くそ (非難、嫌悪)」、 bho 「友よ (同輩以下への呼びかけ)」、 bhaṇe 「おい (部下への呼びかけ)」、 maññe 「たぶん、きっと」、 sādhu 「よし、上手い、素晴らしい」
全体的な注意: いくつかの不変化詞の使い方は、 「構文」の章で扱います。