第十五章

韻律論

626. 韻律論とは、文法のうち、詩の作り方を扱う分野です

• gāthā とは、パーリ語の詩では、「連」のことです。
• pāda, pada とは、一連の四分の一のことです。詩行にあたります。
• vaṇṇa とは、pāda の中の音節です。
• 短い音節を、lahu と言います。
• 長い音節を、garu と言います。
• 韻脚は gaṇa と言います。

627. ∪ という記号は、短い音節を表します。 － という記号は、長い音節を表します。 二つの長い音節からなる韻脚を、gā と言います。 garu の頭を採って、長い音節を ga で表すとき、 gā は ga + ga となります。 二つの短い音節からなる韻脚を、lā と言います。 lahu の頭を採って、短い音節を la で表すとき、 lā は la + la となります。

628. 二音節の韻脚は、以下の四つです:

629. 三音節の韻脚、(パーリ語では (八個あるので) aṭṭhagaṇa と言います) は、以下の通りです:

短い音節・長い音節

630. パーリ語では、短い母音は a, i, u です。長い母音は ā, ī, ū, e, o です。 (訳註: 短い母音の後ろに、一つまでの子音が続くとき、その母音が含まれる音節は短いです。 長い母音の含まれる音節は、長いです。そして) a, i, u の後ろに二重子音が続くとき、その母音が含まれる音節は、韻律的に長いです。 例えば、cakkañca の一つめと二つめの音節は、韻律的に長いです。a の後ろに kk, ñc が続くからです。 母音の後ろにニッガヒータ (ṁ) が続くとき、その母音が含まれる音節は、必ず韻律的に長いです。 例えば、 saccaṁ の二音節めは長いです。 詩においては、韻律の要求を満たすために、本来短い母音が延ばされることがしばしばあります。 また、本来長い母音が短くなることもしばしばあります。 短い母音を延ばす代わりに、その後ろの子音を二重化することも時々あります。

韻律の種類

631. 韻律は三つに大別できます。それぞれ sama, addhasama, visama と言います。 音節の並びが四つの pāda (詩行) で共通であるとき、その韻律を sama と言います。 音節の並びが、一番・三番の pāda と、二番・四番の pāda で共通であるとき、 その韻律を addhasama と言います。 全ての pāda が違うとき、その韻律を visama と言います。

sama 類

632. この区分の gāthā (連) では、各 pāda (詩行) の音節数は 6 から 22 まであります。 これら 17 個の韻律には、以下のように名前が付いています。

633. これらはさらに、それぞれの連に使われる韻脚の種類によって区分されます。 四つの pāda は共通ですから、各韻律につき一つの pāda のみを図示します。

1. gāyattī: pāda が 6 音節からなります。一種類だけです:

2. uṇhī: pāda が 7 音節からなります。一種類だけです:

3. anuṭṭhubhaṁ: pāda が 8 音節からなります。五種類あります:

4. brahatī: pāda が 9 音節からなります。二種類あります:

5. panti: pāda が 10 音節からなります。七種類あります:

6. tuṭṭhubhaṁ: pāda が 11 音節からなります。11 種類あります:

注意: indavajirā と upindavajirā の詩行が任意の順番で混じっている連は、 upajāti と言います。

注意: 四つめと七つめの音節の後ろに、休止があります。

7. jagatī: pāda が 12 音節からなります。14 種類あります:

注意: 4 つめと 12 個めの音節の後ろに、休止があります。

注意: 5 つめと 12 個めの音節の後ろに、休止があります。

8. atijagatī: pāda が 13 音節からなります。二種類あります:

注意: 3 つめと 13 個めの音節の後ろに、休止があります。

注意: 4 つめと 13 個めの音節の後ろに、休止があります。

9. sakkarī: pāda が 14 音節からなります。三種類あります:

注意: 7 つめと 14 個めの音節の後ろに、休止があります。

注意: 7 つめと 14 個めの音節の後ろに、休止があります。

10. atisakkarī: 15 音節です。四種類あります:

注意: 8 つめと 15 個めの音節の後ろに、休止があります。

注意: 8 つめの音節の後ろに、休止があります。

11. aṭṭhi: 16 音節です。一種類だけです:

12. atyaṭṭhi: 17 音節です。三種類あります:

注意: 6 つめと 17 個めの音節の後ろに、休止があります。

注意: 4 つめと 10 個めと 17 個めの音節の後ろに、休止があります。

13. dhuti: 18 音節です。一種類だけです:

14. atidhuti: 19 音節です。二種類あります:

注意: 6 つめと 13 個めと 19 個めの音節の後ろに、休止があります。

注意: 12 個めと 19 個めの音節の後ろに、休止があります。

15. kati: 20 音節です。一種類だけです:

16. pakati: 21 音節です。一種類だけです:

17. ākati: 22 音節です。一種類だけです:

addhasama 類

634. addhasama の韻律では、一つめと三つめ、二つめと四つめの pāda が 同じです。この区分の韻律を 11 種類、以下に示します。

注意: aparavatta は、下記で説明する vetāliya に対応します。

635. 636. 637. 638. 639. 640. (訳註: 欠落)

jāti

641. まず ariyā という詩形を説明します。 連の前半 (2 pāda 分) は、韻脚 7.5 個からできます。 そのうち、偶数個め (2, 4, 6) の韻脚は、次のどれでもかまいません: bha, ja, sa, gā, ∪ ∪ ∪ ∪。 しかし、奇数個め (1, 3, 5) の韻脚は、ja になってはいけません。 また、6 個めの韻脚は、∪ か ∪ ∪ ∪ ∪ のどちらかであってもかまいません。 連の後半も、前半と同じ条件を満たさなくてはいけません。 jāti 類の韻律では、一つの韻脚が四拍からなることに気をつけてください 拍とは、短い音節を発音するのに必要な時間のことです。 長い音節は二拍となります。ですから、ariyā の各韻脚 (bha, ja, sa, gā, ∪ ∪ ∪ ∪) は、どれも四拍です。ariyā の連の一例を示します:

642. vetāliya 詩形では、普通、奇数個めの pāda が 14 拍、偶数個めの pāda が 16 拍 になります。 mattāsamaka 詩形では、どの pāda も 16 拍になります。 jāti 類の韻律にはたくさんの種類がありますが、 それらをすべて扱うのは、この本の範囲を超えています。 しかしその中でも vetāliya はよく出てきますから、 以下にこれを図示します。各 pāda は三つの座からなります。 第 1, 3 pāda の第 1 座は、6 拍からなります。 第 2, 4 pāda の第 1 座は、8 拍からなります。 そして、第 2 座はクレーティコス、第 3 座はイアンボスです。

注意 (a) 上は、完全な vetāliya です。第 3 座は、イアンボス以外にも、 以下のどれかになることがあります:

注意 (b) 長い音節の記号 (－) は、二拍と数えます。 短い音節の二倍と等しいからです。

終