第十章

動詞

354. 動詞の屈折を活用と言います。 活用に際して、動詞の語根は、 何らかの接頭辞や終端が付加されることで、 形を変えます。 そうすることによって、 時制人称 の違いを表します。

355. 態には二種類あります。

  1. 能動態、パーリ語 parassapada (直訳: 他人のための語)
  2. 反射態、パーリ語 attanopada (直訳: 自分のための語)

356. 能動態 parassapada は、その動詞の意味する行動の成果や結果が、 主語や動作主とは異なる別の人や物に渡るときに使われる、ということができます。 反射態 attanopada は、その動詞の意味する行動の成果や結果が、 他ならぬその動作主に生じるときに使われます。 反射態は、その動作主が、その語根に表される行動をとる能力を持っている、 あるいは、その語根に表される状態にある、ということを 暗示するのみです。

357. ここで注意しなければいけないのは、反射態はその重要性を かなりの部分失ってしまっているということです。 能動態と反射態の区別は、全てとは言わずともほとんど失われてしまい、 能動態と反射態の使い分けは大部分、韻律の要請によって決まります。 従って、反射態、あるいは「中動態」とも呼ばれる態が使われるのは、 詩に限られます。散文にはまれにしか出てきません。

358. 時制には六種類あります。

  1. 現在: 現在と、歴史的現在 (訳註: 元の語は its[=present] preterite。現在形を使って過去のことを表すこと) を表します。
  2. 未完了: 元々は特定できる程度の昔を表していました。
  3. アオリスト: 最近過ぎた過去を表していました。 今はこれがパーリ語で唯一の本物の過去時制です。 非常に広範囲に使われます。
  4. 完了: 元々は特定できないほど昔のことを表していました。この時制が使われるのは 非常にまれです。
  5. 未来: 一般的な未来と、歴史的未来を表します。 (訳註: 歴史的未来という用語は訳者のでっち上げです。 元の語は its[=future] preterite。苛立ち・驚き・嘆きなどの感情を未来形で表現できるのですが、その場合、過去のことでも未来形にします。 おそらくそのことを指しています)
  6. 条件: 何か過去のものと比べて未来の時間を表します。 また、実行に際して何か障害があって、完遂できない 行動を表します。

359. 現在時制にはが三つあります:

  1. 直説法
  2. 命令法
  3. 希求法

360. 現在時制、完了時制、未来時制には、 それぞれに関連付けて呼ばれる分詞があります。

  1. 現在分詞
  2. 完了分詞
  3. 未来分詞

注意: 完了分詞はほとんどの場合その語根から作られて、 主に、過去かつ受動の意味になります。 また、中動の意味になることも時にあります。

361. 必要の分詞、あるいは未来受動分詞可能分詞と呼ばれるものもありますが、 これは単に動詞的形容詞のことです。

362. 現在分詞と未来分詞は、作るときに元にする語基によって、 能動の意味になったり受動の意味になったりします。

363. 動詞的名詞には二種類あります:

  1. 不定詞: 対格形です。まれに与格形のこともあります。 活用せず、時制とも関係しません。パーリ語の不定詞は、 英語の不定詞と同じ普通の意味です。
  2. いわゆる動名詞: これは単に、絶対分詞 (訳注: 英文法で言う「絶対分詞(独立分詞)構文」) の 意味合いをもつ派生名詞の格形のことです。

364. には二つあります: 単数複数です。

365. 人称には三つあります: 一人称二人称三人称です。

366. 以上から、時制のグループは明確に四つの系統に分けることができます。

  1. 現在系統
    1. 直説法現在時制、と歴史的現在
    2. 未完了時制
    3. 命令法現在時制
    4. 希求法現在時制
    5. 現在分詞
  2. アオリスト系統
    1. アオリスト時制 (のみ)
  3. 完了系統
    1. 完了時制
    2. 完了分詞
  4. 未来系統
    1. 未来時制
    2. 条件時制
    3. 未来分詞

367. 現実的でない虚構的な分類ですが、 特殊時制一般時制に分けることもあります。 このように分けると、特殊時制は特殊な語基、 つまり語根に修正を加えた形から作られて、 一般時制は語根そのものから作られる、という風に 考えてしまいがちです。しかしそれは間違いです。 後に注意しますが、特殊時制と一般時制で語基が交換されることは、 まれではありません。

368. ではどういう分類かというと、 現在系統は飛びぬけて最も重要であって、活用の違い、すなわち 動詞の分類の基礎となるものですから、 これを「特殊時制」と呼ぶのです。 次の節で、現在系統 (特殊時制) の語幹・語基の作り方を説明します。 それには十種類あり、七つの活用に分けられます。 これらの語基を「特殊語基」と呼びます。

369. 動詞の活用は、さらに原始活用派生活用に分けられます。

(A) 原始動詞

現在系統の特殊語基の作り方

活用

370. 第一活用の動詞には、現在幹・語基の作り方が、以下のように四つあります。

(1) 語根が子音で終わり、a を付加するだけで語基・語幹ができるもの。

語根語基
pac 料理するpaca
labh 得るlabha
mar 死ぬmara
rakkh 守るrakkha
yāc 乞うyāca
vad 言うvada
tar 渡るtara
jīv 生きるjīva
bhar 運ぶbhara

371. i,u + 子音 で終わる語根は、母音(i, u)を強調する場合があります。 しない場合もあります。 いずれの場合も、この区分に属します。

(強調しないもの)
語根語基
tud 突くtuda
phus 触るphusa
likh 書くlikha
nud 追い払うnuda
(強調するもの)
語根語基
gup 見守るgopa
subh 輝くsobha

(2) 活用の標識 a を使わないもの。各時制の人称語尾は、 語根に直接つなげます。

語根語基
行く
吹く
ṭhā 立つṭhā
khyā 告げる (接頭辞 ā とともに)khyā
brū 話すbrū

注意 (a) i, ī, u, ū で終わる語根のうち、a を付加したときに 対応する半母音形に変わらず、強調形 (109, 104-107) になるものは、 ここに分類できるといえます。

語根語基
導くne (もしくは naya →(3))
ji 勝つje (もしくは jaya →(3))
であるho
ku 鳴るko (もしくは kava →(3))

注意 (b) これら一見純粋な語根に見える、変形した語根に、 人称語尾が付きます。語根 yā, vā, ṭhā (→(2)) と同様です。

注意 (c) これらの語根は二つの特殊語基を持ちます。 語根末尾の母音が i, ī のときは e もしくは aya の形になり、 語根末尾の母音が u, ū のときは o もしくは ava の形になります。

(3)語根が i, ī もしくは u, ū で終わり、活用の標識 a を付けると、 各々 ay, av に変化するもの (103-110)。

語根語基
導く(√ + a =)naya
ji 勝つ(√ji + a =)jaya
bhū である(√bhū + a =)bhava
ku 鳴る(√ku + a =)kava
khi 統べる(√khi + a =)khaya
(上記 (2) の注意 (a), (c) も参照のこと)

(4) 語根を畳音することで特殊語基を作るもの。

語根語基
ṭhā 立つtiṭṭhā
与えるdadā
dhā 置くdadhā
捨てるjahā
hu 捧げるjuho

注意: これらは、現在時制や命令法の人称語尾が後ろに続いても、 長い ā を保持します。

372. 畳音の規則は以下のようになります。

  1. 畳音とは、語根の中の最初の子音とその次の母音を、 繰り返すことです。 語根が母音で始まる場合は、その母音のみが重ねられます。
  2. 喉音には、対応する口蓋音を重ねます。
  3. 無気音には、常に無気音を重ねます (§9 の表を参照)。 つまり、無気音には、常にそれ自身を重ねるということです。
  4. 語根が h で始まる場合、j を重ねます。
  5. 帯気音には、無気音を重ねます。
  6. v には、一般的に u を重ねます。
  7. 畳音の音節内では、長母音は短くなります。
    1. a, ā は、畳音内では a になります。
    2. i, ī は、畳音内では i になることがあります。
    3. u, ū は、畳音内では u になりますが、a になることもあります。
    4. 語根の i は、しばしば e に変わります。
    5. 語根の u は、時々 o に変わります。
    6. 語根の最初の子音に続く a は、時々 ā と長くなります。
語根畳音した語基
dhā 置く(372,5,7-a)dadhā
与える(372,3,7-a)dadā
kit 癒す(372,2,7-b; 88)cikiccha
gam 行く(372,2,7-a)jagama
khaṇ 掘る(372,2,7-a)cakhaṇa
har 運ぶ(372,4,7-a,f)jahāra
has 笑う(372,4,7-a,f)jahāsa
budh 知る(372,3,7-e)bubodha
suc 嘆く(372,3,7-e)susoca
pac 料理する(372,3,7-a)papaca
chid 切る(372,5,7-d)cicheda
bhū である(372,5,7-c)babhuva
vas 生きる(372,6,7-f)uvāsa
vad 言う(372,6,7-f)uvāda
ah 言う(372,1; 22)āha

注意: 上記の畳音規則は、完了時制にも適用できます。 ですが、パーリ語の完了時制は非常にまれですので、 学習者は、読んでいく中で実際に見つかるまでは、 完了時制形の存在を考えるべきではありません。

373. 第二活用の動詞は、語根の末尾の子音の直前に ニッガヒータを挿入し、さらに、 第一活用のように後ろに a を付加することで、 特殊語基を作ります。 ニッガヒータは普通の連声規則 (39) に従います。

語根語基
rudh 抑えるrundha
muc 解放するmuñca
chid 切るchinda
lip 汚すlimpa
bhuj 食べるbhuñja
pis すりつぶすpiṁsa

374. 第三活用の動詞は、語根に ya を付加するのが特徴です。 ya の同化規則 (70 ff) が、いつもどおりに適用されます。

語根語基
yudh 戦うyudh + ya (74,vi) =yujjha
budh 知るbudh + ya (74,vi) =bujjha
pas 見るpas + ya (76,i) =passa
dus 苛立たせるdus + ya (76,i) =dussa
歌う + yagāya
jhā 考えるjhā + yajhāya

注意: この活用の語根のうち、長い ā で終わるものは、 時々 -e の形で提示されることがあります:

ge = 歌う
ve = 織る
jhe = jhā 考える

375. の形 ( など) で提示された場合は、 すでに見たように第三活用です。 ですが、-e の形で提示された場合は、 第一活用の第三区分に属すことになり、-a を付加することで語基を作ります。

ge + a = gāya
ve + a = vāya

注意: 末尾の e + a が、(一つめの a を延ばすことで) āya となることに注目してください。

376. 第四活用の動詞は、語根に ṇuṇā (語根が母音で終わる場合)、 もしくは uṇuuṇā (語根が子音で終わる場合) を付加することで、 現在幹・語基を作ります。

注意 (a) ṇu, uṇuu は、強調して o になることがあります。

注意 (b) この uo は、 母音で始まる人称語尾が続くとき、 v に変わることがあります (27,ii a,b)。

語根語基
su 聞くsuṇā, suṇo
pa + √āp = pāp 達するpāpuṇā, pāpuṇo

注意 (c) ṇā, uṇāā は、現在時制と命令法の人称語尾が付いても 長いままです (三人称複数を除く)。 ですが、短い形で出てくることも多いです。

注意 (d) が脱-舌音化して、歯鼻音の n に 変わる場合が少数あります。サンスクリットからの類推によるものです。

377. 第五活用の動詞は、語根に を付加することで、語基を作ります。 この語根は必ず母音で終わります。

注意 (a) もし語根の末尾の母音が長い (2) 場合は、 を付加すると短くなります。

注意 (b) サンスクリットで r, ṛ を含んでいた語根では、 その影響で、時々 が舌音化して ṇā となることがあります。

語根語基
ci 集めるcinā
買う、物々交換する (Sansk. krī)kīṇā, kiṇā
dhū 振るdhunā
ji 勝つjinā
as 食べるasnā
知るjānā
yu 混ぜる、関連づけるyunā

注意: の長い ā は、現在時制と命令法の全ての人称 (三人称複数を除く) において、 保持されます。短い形 na もしばしば見つかります。

378. 第六活用の動詞は、語根に u を付加することで、 特殊語基を作ります。この u は、一般的に強調されて o になります。 これに母音で始まる語尾が付くと、v に変わります (27)。

語根語基
kar するkaro
tan 伸ばすtano
kuṇ 音を立てるkuṇo
van 乞うvano

注意 (a) √kar の活用は非常に不規則で、複数の語基から作られます。 後に完全な形で述べます。

注意 (b) この活用に属する語根は著しく少ないです。

379. 第七活用の動詞は、語根に aya を付加することで、 特殊語基を作ります。これは縮約して e に置き換わることがあります。 e の形の方が、aya の形より、一般的です (第一活用第三区分と比べてください)。

注意: 以下のことに細心の注意を払ってください。

注意 (a) 語根の母音が u のとき、その後ろに結合子音が続く場合を除き、 o になります。

注意 (b) 語根の母音が a のとき、その後ろに一つだけ子音が続く場合は、 一般的に延ばされます。ですが、短いままのことも時々あります。

注意 (c) 上記のことから、第七活用の動詞は二つの語基を持つことがわかります。 e で終わる形と、aya で終わる形 (第一活用第三区分と比べてください) です。

語根語基
cur 盗むcore, coraya
gup 守護するgope, gopaya
pus 養うpose, posaya
bandh 縛るbandhe, bandhaya
tīr 完遂するtīre, tīraya
chaḍḍ 捨てるchaḍḍe, chaḍḍaya
kath 言うkathe, kathaya

380. 同じ語根から二つや三つ、ものによってはほとんど全ての活用型に従って、 複数の語基を作れる場合が非常にたくさんあります。 その場合、同じ語根から作られた各々の特殊語基の意味は、 たいてい、その語根自身の元々の意味と異なります。 いくつか例を見たほうがわかりやすいでしょう。 語基の後ろの数字は、活用型を表しています。

語根語基
subhsobha (1) 輝くsubh + a = sobha
subhsumbha (2) 投げ飛ばすsubh + + a = sumbha
kuskosa (1) 呼ぶ、切るkus + a = kosa
kuskussa (3) 抱くkus + ya = kussa
tikteka (1) 行くtik + a = teka
tiktikuṇā (4) 圧迫するtik + uṇā = tikuṇā
re (1) 伸ばす + a = re
rīṇā (5) 知らせる + ṇā = rīṇā
laya (1) 液化する + a = laya
līnā (5) 近づく + = līnā
tantana (1) 助けるtan + a = tana
tantano (6) 伸ばすtan + u (→o) = tano
vaḍḍhvaḍḍha (1) 増えるvaḍḍh + a = vaḍḍha
vaḍḍhvaḍḍhe (7) ある容れ物から別の容れ物に注ぐvaḍḍh + e = vaḍḍhe
vidvida (1) 知るvid + a = vida
vidvijja (3) 存在するvid + ya = vijja
vidvinda (2) 見つける、得るvid + + a = vinda
vidvede, vedaya (7) 感じる、話すvid + e = vede, vedaya

現在系統の活用

第一活用

381. ここまでの節で述べてきた規則に従って、動詞の語基が作られれば、 あと残っているのは、それに適切な人称語尾を付け加えることだけです。 現在系統の時制の人称語尾をここに示します。これは最も、飛びぬけて重要です。 現在分詞についてはここでは述べず、また別に特別の章を割いて扱います。

直説法現在
能動態反射態
単数複数単数複数
1.mimaemhe
2.sithasevhe
3.tintitente, re
未完了
能動態反射態
単数複数単数複数
1.a, aṁamhāiṁmhase
2.otthasevhaṁ
3.autthatthuṁ
命令法
能動態反射態
単数複数単数複数
1.mimaeāmase
2.hithassuvho
3.tuntutaṁntaṁ
希求法
能動態反射態
単数複数単数複数
1.eyyāmieyyāmaeyyaṁeyyāmhe
2.eyyāsieyyāthaethoeyyavho
3.eyyaeyyuṁethaeraṁ

注意 (a) 希求法-単数-能動態の、eyyāmi, eyyāsi, eyya の代わりに、 e が使われることがあります。

注意 (b) 母音で始まる人称語尾が続くとき、語基の母音は落ちます。

注意 (c) 直説法現在の mi, ma が続くとき、語基の a は延ばされます。

注意 (d) 命令法の二人称単数能動態において、hi を使わずに、 語基・語幹のみが使われることがあります。 また、hi が後ろに続くときは、語基の a は延ばされます。

382. 上記 (370) で述べたように、第一活用には四つの区分があります。 そのうちの第一区分、子音で終わる語根に a をつけて語基を作るものは、 きわめてたくさんあります。

383.pac (料理する) の変化表は以下のようになります。

直説法現在
私は料理する、私たちは料理する、あなたは料理する、あなたたちは料理する、彼は料理する、彼らは料理する
能動態反射態
単数複数単数複数
1.pacāmipacāmapacepacāmhe
2.pacasipacathapacasepacavhe
3.pacatipacantipacatepacante, pacare
未完了
私は料理した、など
能動態反射態
単数複数単数複数
1.apaca, apacaṁapacamhāapaciṁapacāmhase, apacamhase
2.apacoapacatthaapacaseapacavhaṁ
3.apacaapacuapacatthaapacatthuṁ
命令法
私に料理させよ、など
能動態反射態
単数複数単数複数
1.pacāmipacāmapacepacāmase
2.pacāhi, pacapacathapacassupacavho
3.pacatupacantupacataṁpacantaṁ
希求法
私は料理すべし、など
能動態反射態
単数複数単数複数
1.paceyyāmi, pacepaceyyāmapaceyyaṁpaceyyāmhe
2.paceyyāsi, pacepaceyyāthapacethopaceyyavho
3.paceyya, pacepaceyyuṁpacethapaceraṁ

注意 (a) 未完了の、語頭の加音 a は、省略されることがあります。 その場合、paca, pacaṁ, paco などという形になります。

注意 (b) 三人称単数-能動態の末尾の母音は、長くても構いません: apacā, apacū (訳註: 原文ママ)。

384. 七つの活用型の他の特殊語基にも、上に挙げた特殊時制の人称語尾が、 √pac の例と同じように付加されます。

385. 第一活用の第三区分、i, ī, u, ū で終わる語根の場合は、 説明は必要ありません。(371,3) に従って語基を得たあとは、 上の語尾をただ付加すればいいのです。

現在-能動
bhū である (語基 bhava) 導く (語基 naya)
単数複数単数複数
1.bhavāmibhavāmanayāminayāma
2.bhavasibhavathanayasinayatha
3.bhavatibhavantinayatinayanti
現在-反射
単数複数単数複数
1.bhavebhavāmhenayenayāmhe
2.bhavasebhavavhenayasenayavhe
3.bhavatebhavantenayatenayante
未完了-能動
単数複数単数複数
1.abhava, abhavaṁabhavamhāanaya, anayaṁanayamhā
2.abhavoabhavatthaanayoanayattha
3.abhavaabhavuanayaanayu
未完了-反射
単数複数単数複数
1.abhaviṁabhavāmhaseanayiṁanayāmhase
2.abhavaseabhavavhaṁanayaseanayavhaṁ
3.abhavatthaabhavatthuṁanayatthaanayatthuṁ
命令法-能動
単数複数単数複数
1.bhavāmibhavāmanayāminayāma
2.bhavāhi, bhavabhavathanayāhi, nayanayatha
3.bhavatubhavantunayatunayantu
命令法-反射
単数複数単数複数
1.bhavebhavāmasenayenayāmase
2.bhavassubhavavhonayassunayavho
3.bhavataṁbhavantaṁnayataṁnayantaṁ
希求法-能動
単数複数単数複数
1.bhaveyyāmi, bhavebhaveyyāmanayeyyāmi, nayenayeyyāma
2.bhaveyyāsi, bhavebhaveyyāthanayeyyāsi, nayenayeyyātha
3.bhaveyya, bhavebhaveyyuṁnayeyya, nayenayeyyuṁ
希求法-反射
単数複数単数複数
1.bhaveyyaṁbhaveyyāmhenayeyyaṁnayeyyāmhe
2.bhavethobhaveyyavhonayethonayeyyavho
3.bhavethabhaveraṁnayethanayeraṁ

386. 第一活用第二区分、人称語尾を直接付加する語根 (371,2)は、多くありません。

387. パーリ語では、全ての時制に能動態と反射態がそろっているような語根ばかりではない、 ということを述べておかなくてはいけません。特に、人称語尾を直接付加する語根においては、 そろっていないことが多いです。

行く 吹く bhā 輝く
単数複数単数複数単数複数
1.yāmiyāma vāmivāma bhāmibhāma
2.yāsiyāthavāsivāthabhāsibhātha
3.yātiyantivātivantibhātibhanti

注意: 三人称複数の nti の前では、語根の ā は短くなります。

388. 希求法では、人称語尾の前に y が挿入されます。

yāyeyyāmi, yāyeyya, vāyeyya, vāye, など

389. この区分の語根の中には、(一般的に)反射態と三人称複数現在-能動態において、 強調 (110) を受けるものもあります。

brū 話す
能動反射
単数複数単数複数
1.brūmibrūma bravebrūmhe
2.brūsibrūtha brūsebrūvhe
3.brūtibravantibrūtebravante

注意: 一・二人称複数-反射態において、時々 u は短くなります。

390. この他、この活用をする語根を挙げます。

han (打つ、殺す): 三人称単数 hanti ⇔ 三人称複数 hananti。 アオリストは ahani, hani などとなります。

i (行く): 強調形 e。弱形の語基 ya も使われます (cf. 第一活用第三区分: たとえば √ には強調形 ne と弱形の語基 naya があります。 同じく √ji の強調形は je で、弱形は jaya です)。 したがって、以下のような変化表になります。

1.emiema
2.esietha
3.etienti, yanti

ṭhā (立つ): ṭhāti, thāsi など。

(守る): pāti, pāsi など。

注意 (a) この区分の語根は、他の活用型に属する語根と同じように、、 動詞接頭辞と組み合わさることがあります。

khyā (告げる) + āākhyā + tiākhyāti
ṭhā + niniṭṭhā + tiniṭṭhāti (終わる)。
han + ninihan + tinihanti (打ち倒す)。
i + upaupe (21) + tiupeti (近づく)。

注意 (b) √ṭhāā は、この語根が畳音されたとき (第一活用-第四区分)、短くなります。

注意 (c) √ṭhā は、動詞接頭辞と組み合わさると、 しばしば特殊語基が ṭhaha という形になります。

ṭhā + saṁsaṇṭhātisaṇṭhahatisantiṭṭhati (立つ) (ニッガヒータの連声を参照のこと)。
ṭhā + patipatiṭṭhātipatiṭṭhahati (しっかり立つ)。
ṭhā + uduṭṭhātiuṭṭhahati (立ち上がる)。

391. 同様に、√dhā も一見第一活用の第二区分に属するように 見えますが、気息を失って daha となり、 √pac と同じ分類 (370,1) になります。 さらに、この語基は、動詞接頭辞と一緒にしか使われません。 この語根はまた、畳音する区分 (372) にも属していて、 その結果 dadhā という語基も持ちます。 語基 dhe もこの語根のものです。これも広く使われます。

dhā 運ぶ、掴む + ninidahatinidadhātinidheti (置く)
dhā + abhiabhidahatiabhidadhātiabhidheti (宣言する)。

392. 第一活用-第四区分 (371,4)、畳音するものに属する語根の中にも、 人称語尾を直接繋げて現在時制と命令法を作るものがあります。*

*この章全体で、たくさんのパーリ語文法書を 参考にしました: Saddanīti, Niruttidīpanī, Galonpyan, Akhyātapadamāla など。

393. i で終わる語根のいくつか (371, 第三区分) は、 語尾を直接取る語根と同じ区分に属するかのように見えます。 ですが本当は、これらの語根は第二区分ではなく第三区分に属していて、 語尾は語根そのものではなく、強調された語基 (105) に付いています。 i, ī がまず a の影響で e に変わる (21,i) のです。 そういう語基は、√cur (語基 core, 第七活用) と全く同じように活用します。 それを以下に示します。このような語根の反射態は、aya の形の語基から作られます。

nī, 語基 ne, naya
現在
能動態反射態
単数複数単数複数
1.neminemanayenayāmhe
2.nesinethanayasenayavhe
3.netinentinayatenayante
命令法
能動態反射態
単数複数単数複数
1.neminemanayenayāmase
2.nehinethanayassunayavho
3.netunentunayataṁnayantaṁ

注意: 希求法も ne のほうの語基から作ることができます。

希求法
能動態反射態
単数複数単数複数
1.neyyāmineyyāmaneyyaṁneyyāmhe
2.neyyāsineyyāthanethoneyyavho
3.neyyaneyyuṁnayethanayeraṁ

394. 他の語根を挙げますと:

寝そべる (語基 se, saya)。
ji 勝つ (語基 je, jaya)。
ḍi 罠を仕掛ける (語基 ḍeoḍḍeti の形で)。

注意: 語根を直接使う区分の中で、最も重要なのは √as (である) です。 ですが、これは欠如動詞に分類するほうが良いです。 この変化は特別な章を設けて説明します (欠如動詞、を参照)。

畳音する語根の活用

395. この区分の動詞の特徴は、畳音の音節が前置されることです。 畳音規則は上で述べました (372)。活用は何も難しくありません。 たとえば、√ の活用は以下のようになります。

現在-能動態未完了-能動態
単数複数単数複数
1.dadāmidadāmaadadaadadamhā
2.dadāsidadāthaadadoadadattha
3.dadātidadantiadadaadadu
希求法-能動態命令法-能動態
単数複数単数複数
1.dadeyyāmidadeyyāmadadāmidadāma
2.dadeyyāsidadeyyāthadadāhi, dadādadātha
3.dadeyya, dadedadeyyuṁdadātudadantu

396. のいくつかの時制は、語基から直接作られます。 それについては、適切な場所で述べます。

注意 (a) √ には、誤った類推により dajjde という語基も見られます: dajjāmi, dajjasi, dajjati, dajjāma, dajjatha, dajjanti など、 demi, desi, deti, dema, detha, denti など。

注意 (b) おそらく複数形からの類推で作られた、変則的な単数現在もあります: dammi, dasi, dati

注意 (c) ほとんどの時制には、反射態がありません。非常に少数のものが 見られるのみです: 一人称単数 dade, 一人称複数 dadāmase

注意 (d) 語根 √ṭhā では、語基の末尾の ā が長く保たれるのは、 一人称単数/複数現在のみです。

単数複数
tiṭṭhāmitiṭṭhāma
tiṭṭhasitiṭṭhatha, ṭhātha
tiṭṭhatitiṭṭhanti

二人称複数 ṭhātha が語根から直接作られることに注意してください。

第二~第七活用

397. 第二~第七活用も何ら難しくありません。 上に記した第一活用と同じように、人称語尾をつけるだけです。

第二活用

398.chid, 語基 chinda (373) (切る):

現在-能動態現在-反射態
単数複数単数複数
1.chindāmichindāmachindechindāmhe
2.chindasichindathachindasechindavhe
3.chindatichindantichindatechindante

399. 他の時制も規則的に作れます: chindeyyāmi, chindeyyāsi, chindeyya もしくは chinde; chindeyyāma, chindeyyātha, chindeyyuṁ

他の時制も同様です。

注意: 語根 √rudh (妨害する)には、 語基が五つあります: rundhati, rundhiti; rundhīti, rundheti, rundhoti

第三活用

400.div, 語基 dibba (77) 遊ぶ:

現在-能動態現在-反射態
単数複数単数複数
1.dibbāmidibbāma dibbe dibbāmhe
2.dibbasidibbathadibbasedibbavhe
3.dibbatidibbantidibbatedibbante

他の時制も規則的に作れます。例えば未完了は adibba, adibbo, adibba, adibbamhā, adibbattha, adibbu、 希求法は dibbe, dibbeyya, dibbeyāmi, dibbeyyāsi など。

第四活用

401.su, 語基 suṇā (376) または suṇo 聞く:

現在-能動態
単数複数もしくは単数複数
1.suṇāmisuṇāma suṇomisuṇoma
2.suṇāsisuṇāthasuṇosisuṇotha
3.suṇātisuṇantisuṇotisuṇonti, suṇvanti

注意 (a) 他の時制は、語基 suṇā から作られます。 そのとき末尾の ā は、人称語尾の始めが i, e の場合に落ちます: suṇeyyāmi, suṇeyyāsi など、suṇissāmi, suṇissāma, suṇissasi など。

注意 (b) √sak (できる) はこの活用型に属しますが、複数の語基があります: sakkuṇāti (k が二重に)、sakkoti (同化 sak + nosakko (57) + tisakkoti)。 同様の過程により sakkāti (sak + sakkā + tisakkāti)、 またこの a が短くなって sakkati という形もあります。

注意 (c) √āp (達する, 接頭辞 pa をつけて pa + āp = pāp) には三つの形があります: pappoti, pāpuṇāti, pāpuṇoti。 √gah (掴む) の語基は音位転移 (111) により gaṇhā となります: gaṇhāmi, gaṇhāsi など。

注意 (d) が脱-舌音化する (376,d) ことがとてもよくあるということを、 すでに述べました。つまり、第四活用の語根の多くは、 サンスクリットの第九活用動詞のように、 を語根に付加することによって 語基を作ります。たとえば、√ci (集める) は、cināti (集める)、 ocināti, ocinati (選び出す、集める) となります。 語基の末尾は長い ā だけでなく、短い a になることもあるので注意してください。 これは、この活用型の語根の多くに当てはまります。 cf. sañcinati, sañcinoti, sañcināti 蓄積する。

注意 (e) √bhū からは、動詞 abhisambhunati, abhisambhunoti (得る) ができます。この動詞の語根が、サンスクリットの √bhṛī にあたるという 文法家もいますが、これはおそらく間違いです。 ネイティブの文法家には、語根として sambhū (Dhammapada にしか現れない) を 与える人もいますが、接頭辞 sam + √bhū だと気付いていないのです。

第五活用

402.dhū, 語基 dhunā (377) 振る:

能動態反射態
単数複数単数複数
1.dhunāmidhunāma dhune dhunāmhe
2.dhunāsidhunāthadhunasedhunavhe
3.dhunātidhunantidhunatedhunante, dhunare

注意 (a) この活用型に属する他の動詞:

jñā, jā, ñā (知る) 語基 jānā
as (食べる) 語基 asnā
mun = √man (考える) 語基 munā

注意 (b) 第四活用と第五活用に属する語根は、語基を作る際に非常によく両者を行き来します。 サンスクリットの語根からの間違った類推によるものです。

第六活用

403.kar (する) 語基 karo (378):

現在
単数複数
1.karomikaroma
2.karosikarotha
3.karotikaronti

注意 (a) √kar には複数の語基があります: karo, kara, kubb。 この動詞の変化表は、(378,a) で述べたように、 欠如動詞の章で完全に与えます。

tan (伸ばす) 語基 tano (強調形)、弱い語基は tanu:

能動態反射態
単数複数単数複数
1.tanomitanoma tanve (27) tanumhe
2.tanositanothatanusetanuvhe
3.tanotitanontitanutetanvante (27)

注意 (a) この活用型の語根はとても少ないです。

第七活用

404. 第七活用の語根は、(379) で注意したように、二つの語基を持ちます。 e で終わるものと、aya で終わるものです。 この語根は、第一活用第三区分 (393) と全く同じように活用します。

不規則な語基

上に述べたいずれの規則にも従わない方法で 特殊語基を作る語根もあります。これらの語根を、不規則と言います。 主要なものをここに挙げます。

gam 行く特殊語基 gaccha
yam 抑える特殊語基 yaccha
guh 隠す特殊語基 gūhe
dhā 掴む特殊語基 daha, dhe (391)
与える特殊語基 dajja
jā, jan 生まれる特殊語基 jāya
飲む特殊語基 piva
ḍaṁs (蚊・蛇が)噛む特殊語基 ḍasa
dhmā 吹く特殊語基 dhama
vyadh (=vadh) 特殊語基 vadha
sad 座る特殊語基 sīda
ṭhā 立つ特殊語基 tiṭṭhā
is 願う特殊語基 iccha
vad 言う特殊語基 vajja, vajje, vada, vāde
mar 死ぬ特殊語基 miya, miyya, mara
gah 掴みとる特殊語基 gheppa*
gam 行く特殊語基 ghamma, gaggha*
jir 老いる特殊語基 jīya, jiyya
dis, das 見る特殊語基 dakkha, daccha*

これらの形は SaddanītiAkhyatapadamālā によって与えられています。 これらは gaccha と同様に規則的に活用します: ghammāmi, ghammasi, ghammati など、ghagghāmi, ghagghasi, ghagghati など。 ghammeyya, gagghe, gaggheyya, など。√dis, das の語基 dakkha, daccha は、 未来語基からの誤った類推によります (未来語基については、 未来時制を取り扱うときに見ていきます)。上に挙げた変化の仕方のほとんどは、 サンスクリットの第一・第四・第六活用動詞における、似たような変化に 対応します。

アオリスト

405. アオリストは、パーリ語の唯一の本物の過去時制です。 未完了時制とアオリストの人称語尾は、どうしようもないほどに 混ざってしまっていて、ネーティブの文法家たちは、 未完了とアオリストを見分けるに際して、途方に暮れていました。 しかしアオリストのほうが、慨して、未完了より優先されました。 サンスクリットの文法を少し知っていないと、 学習者にはおそらく理解できない変則がたくさんあります。 しかし、今このときは、そういうことを考えて拘束される必要はありません。 未完了の普通の語尾はすでに示しました (381)。 とりあえず、以下に記すことに注意を向ければ、多くを得られるでしょう。

406. アオリストは、語根から作られる、とされています。 しかし実際には、語根からも語基からも無頓着に作られます。

407. アオリストの屈折語尾は以下のようになります。

能動態反射態
単数複数単数複数
1.aṁ, ṁ, iṁ, a, āimha, imhā aimhe
2.i, o, ātthasevhaṁ
3.ā, i, īuṁ, iṁsu, ūā, atthuṁ, atthuṁ

注意 (a) 上の語尾を未完了の語尾と見比べると、未完了とアオリストの区別が 難しいことがわかるでしょう (未完了とアオリストの混合は、 比較言語学の学生にはよく知られていることです)。 唯一の判断基準は、未完了は概して特殊語基から作られ、 アオリストは語根から作られるということです。 しかしこれも絶対の基準ではなく、これら二つの時制の見分けが ほとんどつかないという事実はそのままです。

注意 (b) 上に挙げた語尾のうち、しかし最も一般的に使われて、 かつ最もアオリストっぽい特徴のある語尾は:

単数複数
1.iṁimha, imhā
2.iittha
3.iiṁsu, (isuṁ)

注意 (c) aṁ の鼻音はしばしば省略され、a のみが残ります。

注意 (d) 大部分の動詞のアオリストは、(b) に挙げた屈折語尾で作られます。

408. アオリストは三つの型に分けられます。
(i) 語根アオリスト
(ii) 語幹・語基アオリスト
(iii) シグマ-アオリスト

注意 (a) 名前の通り、語根アオリストは語根から直接作られます。

注意 (b) 語幹アオリストは特殊語基から作られます。

注意 (c) シグマ-アオリストは、語根と (407,b) の人称語尾との間に s が挿入されるのが特徴です。

(i) 語根アオリスト

409. このアオリストはあまり一般的ではありません。 いくつか例を挙げます。アオリストは、未完了と同様に、 加音 a が前置されることがあることに、まず注意してください。

410.gam,gā, (√gam の補助形) (行く) のアオリストは以下のようになります。

(a)
単数複数
1.agaṁ, agamā, agamiṁagumha
2.agā, agamāaguttha
3.agā, agamiaguṁ, agamiṁsu

(b)√as (である) (加音 a とともに):

単数複数
1.āsiṁāsimha
2.āsiāsittha
3.āsiāsuṁ, āsiṁsu

411.ṭhā

単数複数
1.aṭṭhaṁaṭṭhamha
2.aṭṭhoaṭṭhattha
3.aṭṭhaaṭṭhaṁsu, aṭṭhuṁ

注意: 始めの ṭh が二重化することについては、(33) を参照してください。

412.kar の一人称単数には akaṁ という形があります。 これは、一・二・三人称単数 akā からの類推に違いありません。この akā は、ベーダの語形 akar から、 r の消失を末尾の a の延長で補ってできたものです。

一人称単数は akaraṁ, akariṁ となることもあります。 二人称複数は akattha, 三人称複数は akaruṁ, akarū, akariṁsu です。

413. (√bhū の異形) (である)

三人称単数: ahū, ahu, (母音の前で) ahud
一人称複数 ahumhā, 三人称複数 ahuṁ

414.

一・二・三人称単数: adā
三人称複数 aduṁ, adaṁsu, adāsuṁ

415. 加音 a は、アオリストから切り離せないわけではありません。 ですから、 (= agā) などのような形も見られます。

(ii) 語幹アオリスト

416. すでに述べたように、このアオリストは、語根ではなく、 語幹もしくは語基から作られます。 加音は保たれることも、保たれないこともあります。

pā, 語基 piva, 飲む
単数複数
1.piviṁpivimha
2.pivi pivittha
3.pivi piviṁsu

反射態は:

pā, 語基 piva, 飲む
単数複数
1.pivepivimhe
2.pivisepivivhaṁ
3.piva, pivāpivu, pivuṁ, piviṁsu, pivisuṁ

417. 原始動詞 (369) の多くが、上の (piva の) ようにアオリストを作ります。 ですからこの形は、加音のある形もない形も、極めて広く使われます。 ここで一度だけ述べておきますが、この加音は詩よりも散文のほうが ずっと良く出てきます。詩においては、加音のあるなしは韻律の要請で決まります。 もう少し例を上げましょう。

bhuj 食べる, 語基 bhuñja gam 行く, 語基 gaccha
単数複数単数複数
1.bhuñjiṁbhuñjimha, bhuñjimhāgacchiṁgacchimha, gacchimhā
2.bhuñjibhuñjitthagacchigacchittha
3.bhuñjibhuñjiṁsugacchi, gañchigacchiṁsu

(iii)シグマ-アオリスト

418. シグマ-アオリストは、語根の母音か語基の母音と、(407,b)に挙げた人称語尾との間に s を挟んで作ります。

419. その結果、屈折語尾は以下のようになります:

単数複数
1.siṁ (= s + iṁ)simha (= s + imha)
2.si (= s + i)sittha (= s + ittha)
3.si (= s + i)suṁ (= s + uṁ)

420. すぐにわかるように、このアオリストの作り方は、 母音で終わる語根に使われます。語尾と語根・語基を繋ぐために s が挿入されるのです。しかし後に見るように、 子音で終わる語根に使われることもあります。 そのときは、s はその子音と同化します。

421. シグマ-語尾は、派生動詞、 それも、e で終わる使役動詞 (cf. 派生活用) に使われることがほとんどです。 第七活用の動詞も e で終わりますから、同じようにアオリストを作ります。

422. 使役動詞:

捨てる, 使役語基 hāpe tas 震える, 使役語基 tāse
単数複数単数複数
1.hāpesiṁhāpesimha tāsesiṁtāsesimha
2.hāpesi hāpesitthatāsesi tāsesittha
3.hāpesi hāpesuṁ tāsesi tāsesuṁ

注意: 三人称複数は、iṁsu の形もよく出てきます: hāpesiṁsu, tāsesiṁsu

423. 第七活用の動詞:

cur 盗む, 語基 core kath 告げる, 語基 kathe
単数複数単数複数
1.coresiṁcoresimha kathesiṁkathesimha
2.coresi coresittha kathesi kathesittha
3.coresi coresuṁ, coresiṁsukathesi kathesuṁ, kathesiṁsu

注意 (a) aya で終わる語基には、(407,b) の語尾を (s を挟まずに) 直接つけることもできます。

単数複数単数複数
1.corayiṁcorayimha kathayiṁkathayimha
2.corayi corayittha kathayi kathayittha
3.corayi corayuṁ, corayiṁsukathayi kathayuṁ, kathayiṁsu

注意 (b) 使役動詞も aya で終わる語基を持ちますから、同じことが言えます。

424. シグマ-アオリストの屈折語尾は、第七活用でも派生動詞でもない語根に付加されることもあります。

(i) 母音で終わる語根に。加音 a を付けることも付けないこともあります。

(ii) 子音で終わるいくつかの語根に。 その場合、普通の同化規則 (85) が厳密に適用されます。

(i) の例

dā, 与える; adāsiṁ, adāsi, adāsimha など。
ṭhā, 立つ; aṭṭhāsiṁ, aṭṭhāsimha など
hā, 捨てる; ahāsiṁ, ahāsi, ahāsimha など
su, 聞く; assosiṁ, assosi, assosimha など
yā, 行く; yāsiṁ, yāsi, yāsimha など

注意: 誤った語根 √ (= √kar, する) から akāsiṁ, akāsi, akāsimha など という語形が見られます。また、√ñā (知る) は aññāsiṁ, aññāsi, aññāsimha などとなります。

(ii) の例

425. 以下の二三の段落には、サンスクリットの文法を参照している箇所が いくつかあります。しかし一読目は、おそらく読み飛ばしたほうがいいでしょう。 与えられた語形をそのまま受け入れてください。 しかしもちろん、進んだ学習者はそこもしっかり読んでください。

426. (419) に与えられたシグマ-屈折語尾の最初の s は、 普通の同化規則に従って、語根の末尾の子音と同化します。

(a) √dis (= Sansk. √dṛś) は addakkhi (= Sansk. adrak-ṣ-is) となります。 addakkhī, adakkhi, dakkhi という形も見られます。

(b) √sak (できる = Sansk. √śak) は、sakkhi, asakkhi (= Sansk. śak-ṣ-is) となります。

(c) √kus (罵る = Sansk. √kruś) は、akkocchi となります。 ただし、シグマ-アオリストの s がない形 akkosi も見られます。

(d) √bhañj (壊す) のアオリストは bhaṅki となります。

注意: 子音で終わる語根からシグマ-アオリストを作るときに起きる変化が どういうものか理解するには、上の例で十分だと思います。 語根の子音は一般的に s (= Sansk. ś) です。j のことも時々あります。 サンスクリットでは、末尾の ś (= パーリ s) は、その後ろに 動詞語尾の が来ると、k に変わります。つまり kṣa となります。 これがパーリ語では kkha となります。 また、別のサンスクリットの音韻規則に従って、末尾の jg となります。 ですが、単語は有声な黙音で終わることができないので、 この g は無声化して k となります。

ただし、子音で終わる語根のシグマ-アオリストは、多くありません。

完了系統

427. すでに見たように、完了系統には、完了時制と完了分詞があります。 分詞のほうは分詞の章で別に扱います。

428. 完了系統は、語根を畳音することが特徴です。 その規則はすでに (372) で述べました。もう一度入念に読み直してください。

429. 語尾は以下のようになります。

完了時制
能動態反射態
単数複数単数複数
1.amha i mhe
2.etthatthovho
3.au tthare

注意 (a) 子音で終わる語根に、子音で始まる上記の語尾を付けるときは、 i を挟みます。

注意 (b) 完了時制が出てくるのは非常にまれです。

430.

能動態
pac, 完了語基 papac bhū, 完了語基 babhūv
単数複数単数複数
1.papacapapacimha babhūvababhūvimha
2.papacepapacitthababhūvebabhūvittha
3.papacapapacu babhūvababhūvu
反射態
単数複数単数複数
1.papaci papacimhebabhūvi babhūvimhe
2.papacitthopapacivhobabhūvitthobabhūvivho
3.papacitthapapacire babhūvitthababhūvire

未来系統

431. 未来系統には、未来時制、条件時制、未来分詞があります。 分詞については、特別の章を割いてそこで説明します。

432. 未来系統には、特別な特徴があります。語根と人称語尾の間に ssa を挟むのです。

注意 (a) 未来系統は、現在語基から作られることも多いです。

注意 (b) 母音 i が、語根・語基と ssa の間に挟まれることも多いです。 この時、語根・語基の末尾の母音は落ちます。

注意 (c) 子音で終わる語根に直接 ssa が付加するとき、 ssa の最初の s が同化することで、 シグマ-アオリストで起きたのと同じ変化が、未来系統でも起きます。

433. 未来時制の人称語尾は:

能動態反射態
単数複数単数複数
1.mima mhe
2.sithasevhe
3.tintitente, re

注意 (a) 能動態の語尾は、直説法現在の語尾 (381) と同じだということがわかります。

注意 (b) mi, ma, mhe が続くとき、ssaa は長くなります。

434. (i) 連結母音 i を使わないもの。

(a) √i (行く), 特殊語基 e (390), 未来語基 essa
能動態反射態
単数複数単数複数
1.essāmiessāma essaṁ essāmhe
2.essasiessathaessaseessavhe
3.essatiessantiessateessante
(a) √ (導く), 特殊語基 ne (371,3), 未来語基 nessa
単数複数
1.nessāminessāma
2.nessasinessatha
3.nessatinessanti
など。
(b) √ṭhā (立つ)
単数複数
1.ṭhassāmiṭhassāma
2.ṭhassasiṭhassatha
3.ṭhassatiṭhassanti
など。

注意: 上は、ssa が語根に直接付く例です。語根の a が短くなることに ついては、(34) を参照。もう一つ例を挙げますと:

(b) √ (与える)
単数複数
1.dassāmidassāma
2.dassasidassatha
3.dassatidassanti
など。

(ii) 連結母音 i を使うもの。

(c) √bhū (である), 特殊語基 bhava, 未来語基 bhavissa
能動態反射態
単数複数単数複数
1.bhavissāmibhavissāma bhavissaṁ bhavissāmhe
2.bhavissasibhavissathabhavissasebhavissavhe
3.bhavissatibhavissantibhavissatebhavissante

(iii) ssa が同化するもの。

(d) √bhuj (食べる) の未来語基は bhokkha となります (Sansk. √bhuj = bhok + ṣya = bhokṣya)。人称語尾をつけると、 bhokkhati, bhokkhate, bhokkhaṁ などとなります。

chid (切る) の未来語基は checcha (Sansk. √chid = chet + ṣya = chetṣya) です。人称語尾をつけると、 checchāmi, checchasi, checchati などとなります。

dis (見る) の未来語基は dakkha (Sansk. √dṛc = drak + ṣya = drakṣya) です。これに人称語尾をつけると dakkhati となりますが、 もっとよく出てくる形は dakkhiti です。 同様に、語根 √sak (できる) の未来時制は sakkhiti となります。

435. 語基 bhokkha, dakkha などは、すでに未来語基になっていますが、 これにさらに i + ssa を付けた形 (二重未来) も見られます。

sak, 未来語基 sakkha: sakkhissāmi, sakkhissasi, sakkhissati, sakkhissāma など。

436. hoti (bhavati の縮約形) (である) には、以下のようにたくさんの 未来形があります。

単数
1. hemi, hehāmi, hohāmi, hessāmi, hehissāmi, hohissāmi
2. hesi, hehisi, hohisi, hessasi, hehissasi, hohissasi
3. heti, hehiti, hohiti, hessati, hehissati, hohissati
複数
1. hema, hehāma, hohāma, hessāma, hehissāma, hohissāma
2. hetha, hehitha, hohitha, hessatha, hehissatha, hohissatha
3. henti, hehinti, hohinti, hessanti, hehissanti, hohissanti

kar (する) の未来時制は:

単数複数
1.kāhāmi kāhāma
2.kāhasi, kāhisikāhatha
3.kāhati, kāhitikāhanti, kāhinti

条件時制

437. 条件時制は、語根の前に加音 a を付けます。

438. 人称語尾は以下のようになります。

能動態反射態
単数複数単数複数
1.ssaṁ ssamhāssaṁ ssāmhase
2.sse, ssa, ssasissathassase ssavhe
3.ssā, ssa, ssatissaṁsussathassiṁsu

注意: この語尾は、語根・語基に i を介してつなげるのが一般的です。

pac (料理する)
能動態反射態
単数複数単数複数
1.apacissaṁ apacissamhāapacissaṁ apacissāmhase
2.apacisse, apacissa, apacissasiapacissathaapacissase apacissavhe
3.apacissā, apacissa, apacissatiapacissaṁsuapacissathaapacissiṁsu

注意 (a) 条件時制の訳し方は、「仮に料理できるとするならば」とか、 「仮に料理するとするならば」とかになります。

注意 (b) 条件時制はそんなに頻繁には使われません。

分詞

現在分詞

能動

439. 全ての分詞は、動詞的形容詞としての性質を持ちます。 ですから、修飾する名詞と数・性・格を一致させなくてはいけません。

440. 現在分詞-能動態の終端は、nta, aṁ, ṁ のいずれかです。 nta, ṁ は語基に、aṁ は語根に付けます。

語根語基現在分詞-能動態の語基
pac, 料理するpaca pacaṁ, pacanta料理している[人など]
kar, する karo karaṁ, karontaしている
chid, 切る chindachindaṁ, chindanta切っている
bhaṇ, 言う bhaṇa bhaṇaṁ, bhaṇanta言っている
bhū, である bhava bhavaṁ, bhavantaである
pā, 飲む piva pivaṁ, pivanta飲んでいる

441. e で終わる動詞の語基 (第一活用第三区分、第七活用、使役動詞。 「派生的、二次的な活用」を参照) は aya の形の語基も持ちます。 このような動詞の現在分詞は、e + nta という形か、 aya + nta, aya + という形になります。

(第一活用・第七活用)
語根語基現在分詞-能動態の語基
cur, 盗む core, coraya corenta, corayaṁ, corayanta
kath, 告げるkathe, kathayakathenta, kathayaṁ, kathayanta
nī, 導く ne, naya nenta, nayaṁ, nayanta
ji, 勝つ je, jaya jenta, jayaṁ, jayanta
(使役動詞)
語根使役語基現在分詞-能動態の語基
dhar, 掴むdhāre, dhāraya dhārenta, dhārayaṁ, dhārayanta
dhārāpe, dhārāpayadhārāpenta, dhārāpayaṁ, dhārāpayanta
mar, 死ぬ māre, māraya mārenta, mārayaṁ, mārayanta
mārāpe, mārāpaya mārāpenta, mārāpayaṁ, mārāpayanta
chid, 切るchede, chedaya chedenta, chedayaṁ, chedayanta
chedāpe, chedāpayachedāpenta, chedāpayaṁ, chedāpayanta

442. ṇā, ṇo, uṇā, uṇo (第四活用) もしくは (第五活用) で終わる語基には、 一般的に終端 nta を付けます。

語根語基現在分詞-能動態の語基
su, 聞くsuṇā, suṇosuṇanta, suṇonta
kī, 買うkiṇā kiṇanta

443. 現在分詞-能動態の語幹・語基は、at もしくは ant で終わります。

語根現在分詞-能動態の語幹単数主格-男性
pac pacat pacaṁ
pacant pacanto
car carat caraṁ
carant caranto
bhaṇbhaṇat bhaṇaṁ
bhaṇantbhaṇanto

444. 女性形は、atnta で終わる語幹・語基に、ī を付加して作ります。

445. 中性形は、男性形と同様ですが、 で終わります。

語根語幹男性女性中性
pacpacatpacaṁpacatīpacaṁ
pacantpacantopacantīpacantaṁ
chidchindatchindaṁchindatīchindaṁ
chindantchindantochindantīchindantaṁ

446. 現在分詞-能動態は、mahā (226) の男性・女性・中性と同じように 曲用します。

現在分詞は、「(被修飾語)が(現在分詞)していると」と訳せる場合も多いです。

反射分詞

447. 反射分詞は、語基の後ろに māna を付けて作ります。 purisa, kaññā, rūpaṁ と同じように曲用します。

反射分詞
語根男性女性中性
pacpacamānopacamānāpacamānaṁ
carcaramānocaramānācaramānaṁ
dadāmānodadāmānādadāmānaṁ
su suṇamānosuṇamānāsuṇamānaṁ

448. 反射分詞は、語根の後ろに āna を付けて作ることもあります。 ただし上のやり方のほうがずっとよく出てきます。 この曲用のしかたは māna 型と同じです。

反射分詞
語根男性女性中性
pacpacānopacānāpacānaṁ
carcarānocarānācarānaṁ
dadānodadānādadānaṁ

注意: 最後の例 dadāna からわかるように、この型の分詞も 語基から作られることがあります。

未来分詞

449. 未来分詞は、能動か反射のいずれかです。

(a) 未来分詞-能動態は、現在分詞-能動態と同じ語尾 (nta, ṁ, aṁ) を採り、 mahā と同様の曲用をします。

(b) 未来分詞-反射態は、語尾 māna, āna を採り、 purisa, kaññā, rūpaṁ と同じように曲用します。

(c) これらの語尾は、未来語基に付けます。

未来分詞-能動態
語根男性女性中性
pacpacissaṁ pacissatī pacissaṁ
pacissantopacissantīpacissantaṁ
carcarissaṁ carissatī carissaṁ
carissantocarissantīcarissantaṁ
su suṇissaṁ suṇissatī suṇissaṁ
suṇissantosuṇissantīsuṇissantaṁ
未来分詞-反射態
語根男性女性中性
pacpacissamānopacissamānāpacissamānaṁ
pacissāno pacissānā pacissānaṁ
carcarissamānocarissamānācarissamānaṁ
carissāno carissānā carissānaṁ
su suṇissamānosuṇissamānāsuṇissamānaṁ
suṇissāno suṇissānā suṇissānaṁ

受動完了分詞

450. 受動完了分詞はとても広く使われます。 語根に接尾辞 ta, na をつけて作ります。

注意: 接尾辞 ta を使って受動完了分詞を作ることが、 飛びぬけて一般的です。

451. 接尾辞 ta の付け方は数通りあります。

(i) 語根が母音で終わるときは、ta は直接それに付加されます。 語根には何の変化も起きません。

(ii) 語根が子音で終わるときは、連結母音 i を介して ta を 付けることがあります。

(iii) 語根が子音で終わるときは、普通の同化規則に従って、 ta がその子音と同化することがあります。

注意: この段階で、同化の章 (51) をしっかり読んでください。

452. (i) 語根が母音で終わる場合。

語根現在受動完了分詞
nahā 入浴するnahāyati 彼は入浴するnahāta 入浴した*[人など]
bhū である、になるbhavati 彼は…である、になるbhūta なった*
導くneti, nayati 彼は導くnīta 導かれた
ji 勝つjeti, jayati 彼は勝つjita 負けた
ci 集めるcināti 彼は集めるcita 集められた
bhī 怖がるbhāyati 彼は怖がるbhīta 怖がった*
行く、経験するyāti 彼は行くyāta 行った*、経験された
ñā 知るjānāti 彼は知るñāta 知られた

(*訳注: 受動態(~される)にしづらい動詞(つまり自動詞)の場合、受動完了分詞の意味は能動完了になります)

注意: ā で終わる語根には、例外が少数あります。

(飲む) → pita (飲まれた)
ṭhā (立つ) → ṭhita (立たれた、立った)
dhā (掴む) → hita (掴まれた)
(与える) → dinna (与えられた)

(ii) 語根が子音で終わり、i を介して ta をつける場合。

語根現在受動完了分詞
pac 料理するpacati 彼は料理するpacita 料理された
cal 振るcalati 彼は振るcalita 振られた
gah 取るgaṇhāti 彼は取るgahita 取られた
kapp 並べるkappeti 彼は並べるkappita 並べられた
khād 食べるkhādati 彼は食べるkhādita 食べられた
likh 書くlikhati 彼は書くlikhita 書かれた
maṇḍ 飾るmaṇḍeti 彼は飾るmaṇḍita 飾られた
gil 呑みこむgilati 彼は呑みこむgilita 呑みこまれた
kath 告げるkatheti 彼は告げるkathita 告げられた

注意 (a) pacita, calita などの受動完了分詞は、 purisa, kaññā, rūpaṁ と同じように曲用します。

注意 (b) 受動完了分詞は、中性形で、名詞として使われることがよくあります。

has (笑う), 受動完了分詞 hasita (笑った), 中性 hasitaṁ (笑顔)
gajj (雷がなる), 受動完了分詞 gajjita (雷がなった), 中性 gajjitaṁ (雷)
jīv (生きる), 受動完了分詞 jīvita (生きた), 中性 jīvitaṁ (命)

453. (iii) 語根に ta が同化する場合。

語根受動完了分詞同化規則
bhuj 食べるbhutta 食べられた(59,a)
muc 解放するmutta 解放された(59,b)
is 願うiṭṭha 願われた(59,ii-iii)
kas 耕すkaṭṭha 耕された(92)
ḍas 噛みつくḍaṭṭha 噛みつかれた(92)
dam 手なずけるdanta 手なずけられた(67)
kam 進むkanta 進んだ(67)
rudh 妨害するruddha 妨害された(63)
budh 知るbuddha 知られた(63)
labh 得るladdha 得られた(63,注意)
majj 磨くmaṭṭha (maṭṭa) 磨かれた(59,i)
muh 間違うmūḷha (muddha) 間違った(100,101,102)
ruh 成長するrūḷha 成長した(100,101,102)
lih 舐めるlīḷha 舐められた(100,101,102)
jhas 傷つけるjhatta 傷ついた(94)
pat 落ちるpatta 落とされた(62)
tap 燃やすtatta 燃やされた(64,i)
duh 乳を搾るduddha 乳を搾られた(100)

454. (a) r で終わる語根は、後ろに ta が付くと r が消えるのが一般的です。

語根受動完了分詞同化規則
kar 作るkata 作られた(81)
sar 覚えるsata 覚えられた(81)
mar 死ぬmata 死んだ(81)

455. (b) n で終わる語根は、後ろに ta が付くと n が消えるのが一般的です。

man 考えるmata 考えられた
khan, khaṇ 掘るkhata (別形 khākhāta という形も) 掘られた
han 殺すhata 殺された

456. (c) m で終わる語根でも、m が消えることがあります。

gam 行くgata 行った
ram 楽しませるrata 喜んだ

457. (d) 末尾の r が、後ろに続く t を舌音化することが、少数あります。

har 奪う、運ぶhaṭa 奪われた、運ばれた

458. na を付けて作る受動完了分詞: 接尾辞 na は、ta よりも出てくることがずっと少ないです。 nata と同様に:

(i) 連結母音 i を介して語根に付けられるか、

(ii) 母音で終わる語根に直接付けられるか、

(iii) 子音で終わる語根に直接付けられて、その際に、 語根の子音が nan に同化するか、n の方が 語根の子音に同化するかします。

注意: na が付されるのは、一般的に d, r で終わる語根です。

459. (iii) の例 (語根の子音が nan に同化)

語根受動完了分詞同化規則
sad 据えるsinna 据えられた(69,ii,iii)

注意: sinna の語形は、nisīdati (座る) = √sad + ni (接頭辞) としてのみ 現れます。√sad に他の接頭辞が付くときは、受動完了分詞は sanna となります:

sad + ava → 受動完了分詞 avasanna (沈められた、鎮まった)
sad + pa → 受動完了分詞 pasanna 鎮まった

(√sad の語基は sīda であることに注意してください)

語根受動完了分詞同化規則
chid 切るchinna 切られた(69,ii,iii)
chad 覆うchanna 覆われた(69,ii,iii)
与えるdinna 与えられた(69,ii,iii)

最後の例においては、語根の ā が落ちて、n がそれを補うために 重ねられています。datta (与えられた) (= + ta, ā が短くなり、 それを補うために t が重ねられる) という形も時々見られます。

注意: 上四つの例からわかるように、 i が挟まれないことが非常に多いです。

語根受動完了分詞同化規則
tar 渡るtiṇṇa 渡られた(83)
car 歩き回るciṇṇa 歩き回った(83)
kir まき散らすkiṇṇa まき散らされた(83)

注意: これらの例では、i がまず挿入され、次に (83) の規則に従って 複製・舌音化します。

460. (iii) の例 (nan が語根の子音に同化)

語根受動完了分詞同化規則
bhaj 壊すbhagga 壊れた(57)
vij 動揺するvigga 動揺した(57)

これら二つの例では、語根の末尾の j が普通の音韻規則に従って g となり、 それに接尾辞 nan が同化 (57) しています (426,注意)。

lag 付着するlagga 付着された(57)

461. (ii) の例

しがみつくlīna しがみついた
切る、収穫するlūna 収穫された、切られた
khi 朽ちる、止むkhīna 朽ちた (末尾の i が延長される)
gilā (glā (113)) 病むgilāna 病んだ
弱まるhīna 弱い、低い

最後の例では、語根の āī に置き換わります。

462. 不規則な受動完了分詞も少数あります。たとえば、 jhāma (燃やされた) ← √jhā (燃やす)、 phulla (破裂した) ← √phal (破裂する) など。 ただし、これらは正確にいえば、派生形容詞です。 それが分詞として使われています。

463. 同じ語根に二つの受動完了分詞が見られることも時々あります。

lag 付着する受動完了分詞 lagga, lagita
gam 行く受動完了分詞 gata, gamita
与える受動完了分詞 dinna, datta
kas 耕す受動完了分詞 kaṭṭha, kasita

464. これら、ta, na で終わる受動完了分詞は、 purisa, kaññā, rūpaṁ と同じように曲用します。

完了分詞-能動態

465. 完了分詞-能動態は、受動完了分詞に を付加して作ります。

語根受動完了分詞完了分詞-能動態
pac 料理するpacita 料理されたpacitavā 料理した
bhuj 食べるbhutta 食べられたbhuttavā 食べた
kar するkata されたkatavā した

注意 (a) で終わる完了分詞-能動態は、guṇavā と同じように曲用します。

男性: pacitavā
女性: pacitavatī または pacitavantī
中性: pacitavaṁ または pacitavantaṁ

注意 (b) 完了分詞-能動態は、接尾辞 を使って作ることもあります。 その場合、 の前の a は延ばされて ā となります。 これは medhāvī (235) と同じように (つまり daṇḍī, nadī, vāri と同じように) 曲用します。 例: pacitāvī (料理した)、bhuttāvī (食べた)。

未来受動分詞

466. この分詞は、必要の分詞、可能分詞、動形容詞とも呼ばれます。 語根に tabba, ya, anīya, īya を付けて作ります。

注意 (a) u, ū で終わる語根の場合、未来受動分詞は 特殊語基から作るのが一般的です。

注意 (b) この分詞は受動の意味を持ち、適当性、妥当性 を表します。「(語根の表すことを) されるのが良い」 「…されなければいけない」「…されるべきだ」という風な訳になります。

注意 (c) 未来受動分詞も、今までの分詞と同じく、形容詞です。 ですから形容詞として扱われます。曲用は、purisa, kaññā, rūpaṁ と同様です。

tabba

467. この接尾辞が最も一般的です。これは:

(i) 母音で終わる語根に直接付加されます。

(ii) 子音で終わる語根には、連結母音 i を介して 繋げることがあります。

(iii) 子音で終わる語根に、連結母音 i を介さずに 繋げる場合、tabbat は、受動完了分詞と全く同じように、 語根の末尾の子音を同化したり、同化されたりします。

(i) の例:

語根未来受動分詞
捨てるhātabba 捨てられるのが良い、捨てられるべき、捨てられなければならない
与えるdātabba 与えられるのが良い、与えられるべき、与えられなければならない
飲むpātabba 飲まれるのが良い、飲まれるべき、飲まれなければならない

注意 (a) i, ī で終わる語根の後ろに tabba が付くと、 i, īe に変わります。

語根未来受動分詞
導くnetabba 導かれるのが良い、導かれなければならない
ji 勝つjetabba 負けるのが良い、負けなければならない
i 行くetabba 行かれるのが良い、行かれなければならない

注意 (b) u, ū で終わる語根は、特殊語基から 未来受動分詞を作ります。

語根未来受動分詞
bhū であるbhavitabba なられるのが良い、べき、なられなければならない
ku 歌うkavitabba 歌われるのが良い、べき、歌われなければならない

su (聞く) の場合、単に u を強調するだけになります: sotabba (聞かれるのが良い、など)

(ii) の例

語根未来受動分詞
pac 料理するpacitabba 料理されるのが良い、べき、料理されなければならない
khan 掘るkhanitabba 掘られるのが良い、べき、掘られなければならない
pucch 訊くpucchitabba 訊かれるのが良い、べき、訊かれなければならない

(iii) の例

語根未来受動分詞
gam 行くgantabba (67) 行かれるのが良い、べき、なければならない
kar するkattabba (80), kātabba (82) されるのが良い、べき、なければならない
labh 受けるladdhabba (63,注意) 受けられるのが良い、べき、なければならない

ya

468. yay は、普通の同化規則 (79) に従って、 語根の末尾の子音と同化します。 語根の母音が強調されることも時々あります。

語根未来受動分詞同化規則
gam 行くgamma 行かれるのが良い、べき、なければならない(71,i)
sak できるsakka されることができるだろう(71)
khād 噛むkhajja 噛まれることのできる (=食べ物)(71,vi)
vaj 避けるvajja 避けられるべき(71,74)
bhū であるbhabba であるべき (=適切な、可能性のある)(77)

最後の例では、語根の母音 ū が、後ろに ya が付くことで強調されています: bhū + yabhav + yabhavyabhabba

語根未来受動分詞同化規則
labh 得るlabbha 得られるのが良い、べき、なければならない(71)
bhuj 食べるbhojja 食べられるのが良い、食べられるもの、食べ物(71)
bhid 壊すbhijja 壊されるのが良い、べき、なければならない(71,vi)
lih 舐めるleyya 舐められるのが良い、べき、なければならない(98,注意)
has 笑うhassa 笑われるのが良い、べき、なければならない(76)
gah 取るgayha 取られるのが良い、べき、なければならない(78,iii)

(a) ya が母音 i を介して語根に付く場合が少数あります。たとえば:

kar する、作る
kāriya されるべき (語根の a が延ばされる)
kayya (末尾の rya に同化する)
kayīra (音位転移 (iii))
bhar 支える
bhāriya 支えられるべき (語根の a が延ばされる)

(b) ā で終わる語根に ya が付く場合、 y は二重になり、āe に変わります。

語根未来受動分詞
捨てるheyya 捨てられるのが良い、べき
飲むpeyya 飲まれるのが良い、べき
与えるdeyya 与えられるのが良い、べき

(c) i, ī で終わる語根に ya が付く場合も、 y は二重になり、i, īe に変わります。

語根未来受動分詞
導くneyya 導かれるのが良い、べき
ji 勝つjeyya 負けるのが良い、べき

anīya

469. 接尾辞 anīya は、語根か語基に付けます。

語根未来受動分詞
pac 料理するpacanīya 料理されるべき
puj 尊敬するpujanīya 尊敬されるべき
kar するkaraṇīya されるべき

この は、語根の r の影響で舌音化する (83) ことに注意してください。

語根未来受動分詞
bhū である (語基 bhava)bhavanīya なられるべき

動名詞

470. 動名詞は、以下のような接尾辞を使って作ります: tvā, tvāna, tūna, ya, tya。 動名詞は曲用しませんが、分詞のような性質を持ちます。

注意 (a) tvā が最も一般的に使われます。tvāna, tūna (時に tūnaṁ) は、 tvā の代わりとして使われますが、散文より詩のほうがずっとよく出てきます。

注意 (b) ya は、tvāna, tūna よりはよく使われます。

注意 (c) tya は、通例 cca の形になります (74,iv)。 これは単に、母音で終わる語根と、動名詞語尾 ya との間に t が挿入されたものです。 (例: pa + √i (発つ) + yapa + i + t + yapetyapecca (死んで) (110))

パーリ語の ya は、単純語根にも、接頭辞のついた複合語根にも、 どちらにも付きます。ですが、複合動詞の後ろに付くことがずっと一般的です。 サンスクリットでは ya は単純語根に使われないからです。

tvā, tvāna, tūna

471. 接尾辞 tvā は:

(i) 連結母音 i を介して語根に付くことがあります。

(ii) 接尾辞の t が、語根の末尾の子音に同化する場合が少数あります。

(iii) 語根の母音は強調されます。

(iv) tvā, tvāna, tūna が付くことで、 語根の末尾の子音が脱落することも時々あります。

(v) 語根が長い母音で終わる場合、この接尾辞が付くと、 語根の母音は短くなります。

(vi) 語根だけでなく、特殊語基に付くこともあります。

語根動名詞
pac 料理するpacitvā 料理して (i)
khād 食べるkhāditvā 食べて (i)
labh 得るladdhā 得て (ii) (63,注意)
labhitvā 得て (i)
導くnetvā 導いて (iii)
chid 切るchetvā 切って (iii,iv)
kar 作るkatvā 作って (iv)
ṭhā 立つ、残るṭhitvā 立って、残って (i)
bhī 恐れるbhitvā 恐れて (v)
与えるdatvā 与えて (v)
bhuj 食べるbhutvā 食べて (iv)
pa + √āp = pāp 得るpatvā 得て (iv,v)
ji 勝つjitvā, jetvā 勝って (iii)

注意:

ṭhā の動名詞は、ṭhatvā のこともあります。
の動名詞は、daditvā, daditvāna のこともあります。
kar (する) の動名詞は、kātūna, kattūna のこともあります。
kam (進む) の動名詞は、nikkamitvā, nikkamitūna です。
su (聞く) の動名詞は、sutvā, sotūnaṁ, suṇitvā, suṇitvāna です。

ya, tya

472. (i) ya は、接頭辞と複合した語根に付くことがほとんどです。

(ii) ya が単純語根と一緒に使われることも少数あります。

(iii) tya は通例 cca に変わります。

(iv) 長い ā で終わる語根には、ya がそのまま付加されます。

(v) ya は、特殊語基に付くこともあります。

(vi) 子音で終わる語根のときは、ya はその子音と同化します。

(vii) 語根・語基に、i を介して ya が付くこともあります。

語根動名詞
sic 水を撒くnisiñciya 水を撒いて (i,vii)
知るvijāniya 知って (i,v,vii)
ikkh 見るsamekkhiya 考慮して (i,vii)
cint 考えるcintiya 考えて (ii,vii)
bhuj 食べるbhuñjiya 食べて (v,ii,vii)
与えるādāya 持って (i,iv)
捨てるvihāya 捨てて (i,iv)
ñā 知るabhiññāya 知って (i,iv)
gah 取るgayha 取って (ii,iii)
gam 行くgamma 行って (vi;71;ii)
vis 入るpavissa 入って (vi,i)
sad 座るnisajja 座って (vi,71,74)
sad 座るnisīdiya 座って (i,vii,v) (459,注意)
kam 歩むakkamma 歩んで (vi,71,33,35)
i 行くpecca 死んで ← pa + i + tya (21,i;74,iv)
i 行くabhisamecca 理解して ← abhi + sam + ā + i + tya (21,i)
han 打つāhacca 打って ← ā + han + tya (nt の前で落ちる)
han 打つupahacca 傷つけて ← upa + han + tya (〃)
han 打つūhacca 糞で汚して ← ud + han + tya (〃)
i 行くpaṭicca 基づいて ← paṭi + i + tya
har 取り去るāhacca 取得して ← ā + har + tya (81)

最後の例は、その上方にある √han からの動名詞と取り違えてはいけません。

注意 (a) 動名詞が ya を使って作られたあと、 その ya が脱落して、語根のみが残る場合が時々あります。

abhiññā 知って ← abhiññāya
paṭisaṅkhā 思案して ← paṭisaṅkhāya
anupādā 執着しないで ← anupādāya (an + upa + ā + √ + ya)

注意 (b) yatvā がどちらも付いたような、複合的な動名詞語尾が 使われる例もいくつか見られます。 これは、語根に i を介して付加されます。

āruyhitvā (√ruh) 登って
ogayhitvā (√gāh = gah) 飛び込んで = ogayha = ogāhitvā

注意 (c) 不規則な形もいくつかあります。

disvā ← √dis 見て
daṭṭhu = disvā
anuvicca ← √vid 知って (末尾の dtya が付いて脱落)
pappuyyapa + √āp 得て = pāpayitvā
vineyya ← √ 取り除いて
niccheyya ← √ 解明して

最後の三例では、y が重ねられます。

atisitvā ← √sar (= Sansk. sṛ(?)) 行き過ぎて、踏み越えて

注意 (d) 同じ語根であっても、複数の語形が見られることに 気付かれたことでしょう。

datvā, daditvā, daditvāna, dāya
karkariya, karitvā, katvā, katvāna, kātūna, kattūna
gahgayha, gaṇhiya, gaṇhitvā

ほとんどの語根は、このように複数の動名詞形を持ちます。

不定詞

473. 不定詞は、接尾辞 tuṁ を使って作るのが一般的です。

474. tave, tuye, tāye という接尾辞も見られますが、まれです。

475. 受動完了分詞 (450) の接尾辞と同様に、tuṁ は:

(i) 母音 i を介して語根・語基に付くことがあります。

(ii) ā で終わる語根には、直接付きます。

(iii) i, ī で終わる語根は、i, īe に変わります。 u, ū で終わる語根は、u, ūo に変わります。

(iv) 語根が子音で終わる場合、tuṁt は、その子音と 同化したり、されたりします。

(v) tuṁ は、特殊語基に付くこともあります。

語根不定詞
pac 料理するpacituṁ 料理するため (i)
khād 食べるkhādituṁ 食べるため (i)
thar 広がるtharituṁ 広がるため (i)
与えるdātuṁ 与えるため (ii)
ṭhā 立つṭhātuṁ 立つため (ii)
行くyātuṁ 行くため (ii)
ji 勝つjetuṁ 勝つため (iii)
導くnetuṁ 導くため (iii)
su 聞くsotuṁ 聞くため (iii)
labh 得るladdhuṁ 得るため (iv;63,注意)
bhuj 食べるbhottuṁ 食べるため (iii,iv;59,a)
pa + √āp 得るpattuṁ 得るため (iv;64,i)
gam 行くgantuṁ 行くため (iv;67)
i 行くetuṁ 行くため (iii)
su 聞くsuṇituṁ 聞くため (v)
budh 知るbodhituṁ 知るため (i,iii)
budh 知るbujjhituṁ 知るため (i,v)
横になるsetuṁ 横になるため (iii)
横になるsayituṁ 横になるため (v)
知るjānituṁ 知るため (v)
chid 切るchindituṁ 切るため (v)
chid 切るchettuṁ 切るため (iii,iv;62,vi)

tave, tuye, tāye

476. これらの接尾辞はベーダ由来であって、パーリ語ではまれにしか使われません。 これらの中では、tave が他の二つより良く出てきます。

語根不定詞
導くnitave 導くため
捨てるvippahātave 捨てるため ← vi + pa + + tave
nam 曲げるunnametave 上るため ← ud + nam + e + tave
dhā 掴むnidhetave 隠すため ← ni + 語基 dhe (391) + tave
mar 死ぬmarituye 死ぬため (i を介して付く)
gaṇ 数えるgaṇetuye 数えるため (語基 gaṇe に付く)
dis 見るdakkhitāye 見るため (404)

477. 同じ語根であっても、いくつかの不定詞形がしばしば見られるということが、 おわかりでしょう。

注意 (a) 不定詞は、能動的にも受動的にも使われます。

注意 (b) 名詞の、āya で終わる与格形は、 不定詞のような意味で使われることが よくあります。

注意 (c) 不定詞は目的を表します。「~するために」と訳せます。

(B) 派生的、二次的な活用

478. 派生活用には、以下のものがあります。

(1) 受動動詞(2) 使役動詞
(3) 名詞由来動詞(4) 願望動詞
(5) 強意動詞

479. これらが派生活用と呼ばれるのは、 上に列挙した五種類の動詞が単純語根から 派生するものだからです。 その際、語根の意味に、明確に定義できる修正がなされます。

480. 使役動詞を除き、派生動詞は全ての時制・態で活用するわけではありません。

(I) 受動動詞

481. 受動活用は、語根に接尾辞 ya を付加して作ります。

482. 接尾辞 ya を付けて受動語基が得られたら、 その語基に能動態か反射態の人称語尾を付けます。

483. 語根に ya をつける方法は三種類あります。

(i) 母音で終わる語根には、そのまま付けます。

(ii) 二重子音で終わる語根の場合、i を介して ya を付けます。 そのとき、この i は延ばされて ī となります。 二重にならないのが普通の子音 (s, h, r) の場合も、 i を介して ya を付けます。

(iii) 子音で終わる語根に、直接 ya を付けることもあります。 その場合、同化規則 (70) に従って、語根の末尾の子音と yay とが 同化します。

(iv) 特殊語基に、長い ī を介して ya をつけることもあります。

(i) の例

注意 (a) 母音で終わる語根に ya を付けるとき、 語根の母音はいくらかの変化をします。 特に、a, i, u のときです。

注意 (b) 語根が ā で終わるとき、ya をつけると āī になります。また、語根が i, u で終わるときは、 ī, ū と延ばされます。

語根受動語基
与えるdīya 与えられる
飲むpīya 飲まれる
dhā 掴むdhīya 掴まれる
ji 勝つjīya 負ける
ci 積むcīya 積まれる
ku 歌うkūya 歌われる
su 聞くsūya 聞かれる

注意 (c) 語根が長い ī, ū で終わるときは、 ī, ū のままです。

語根受動語基
bhū なるbhūya なられる
刈るlūya 刈られる
導くnīya 導かれる

注意 (d) ya の前の長い母音が短くなり、 代わりに y が重ねられる場合もあります。

語根受動語基
導くnīya または niyya
su 聞くsūya または suyya
与えるdīya または diyya

484. これらの語基に、能動態・反射態の人称語尾を付けます。 たとえば √ji (勝つ), 受動語基 jīya (または jiyya) は 次のようになります。

現在-能動態
単数複数
1.jīyāmi 私は負けるjīyāma 私たちは負ける
2.jīyasi あなたは負けるjīyatha あなたたちは負ける
3.jīyati 彼は負けるjīyanti 彼らは負ける
現在-反射態
単数複数
1.jīye 私は負けるjīyāmhe 私たちは負ける
2.jīyase あなたは負けるjīyavhe あなたたちは負ける
3.jīyate 彼は負けるjīyante 彼らは負ける

希求法: (1) jīyeyyaṁ, jīyeyyāmi, (2) jīyetho, jīyeyyāsi, (3) jīyetha, jīyeyya など。

命令法: (1) jīye, jīyāmi, (2) jīyassu, jīyāhi, (3) jīyataṁ, jīyatu

(ii) の例

語根受動語基
pucch 訊くpucchīya 訊かれる
has 笑うhasīya 笑われる
vas 住むvasīya 住まれる
kar 作るkarīya 作られる
sar 覚えるsarīya 覚えられる
mah 敬うmahīya 敬われる

(iii) の例

語根受動語基
labh 得るlabbha 得られる (70,71)
pac 料理するpacca 料理される (70,71)
bhan 話すbhañña 話される (70,71)
khād 食べるkhajja 食べられる (70,71,34)
han 殺すhañña 殺される (70,71)
bandh 縛るbajjha 縛られる (70,71,74)

(iv) の例

語根受動語基
gam 行くgacchīya 行かれる
budh 知るbujjhīya 知られる
is 願うicchīya 願われる

485. 受動動詞の ya の前の ī は、時々短くなります: mahīyati または mahiyati (尊敬される)

486. ā + 子音 で終わる語根の受動動詞を作るときは、 ī を介するのが普通です。

yāc 乞う → yācīyati
pa + √aj 駆り立てる → pājpājīyati 駆り立てられる

487. 子音で終わる語根の中には、ī を介さずに直接 ya が付加され、 かつ同化の起こらないものもあります。

lup 切る、省く → lupya + tilupyati 省かれる、切られる
gam 行く → gamya + tigamyati 行かれる

注意 (a) すでに述べたように (483,d)、 ya の前の ī が短くなると、それを補うために yay が重ねられます。

注意 (b) 反射態の完了・アオリスト・未来・条件時制 (= 一般時制 (367)) が、受動の意味で使われることもよくあります。

488. 同じ語根から何種類かの受動動詞ができることがあります:

kar する → 受動動詞: karīyati, kariyyati, kayirati (音位転移), kayyati (r の同化 (80))。
gam 行く → 受動動詞: gamīyati, gacchīyati, gamyati
gah 取る → 受動動詞: gayhati (音位転移), gheppati (不規則)。
捨てる → 受動動詞: hāyati, hīyati

489. 不規則な受動動詞形:

vah 運ぶ, 受動語基 vuyh: vuyhāmi, vuyhasi, vuyhati, vuyhe, vuyhase, vuyhate, ...
vas 住む, 受動語基 vuss: vussāmi, vussasi, vussati, ...
yaj 犠牲にする, 受動語基 ijj: ijjāmi, ijjasi, ijjati, ...
vac 話す, 受動語基 ucc: uccāmi, uccasi, uccati, ...
vac 話す, 受動語基 vucc: vuccāmi, vuccasi, vuccati, ...

490. 語根の末尾の s は、普通は重ねられることがありませんが、 重ねられる例が時々見られます:

dis 見る → dissati 見られる
nas 破壊する → nassati 破壊される

(II) 使役動詞

491. 使役動詞は、語根に以下の接尾辞を付加して作ります:

(i) aya (しばしば縮約形 e になります)
(ii) āpaya (同様に、しばしば縮約形 āpe になります)

492. (i) 語根が (母音) + (単子音) で終わるとき、 これらの接尾辞が付くと、語幹の母音は強調されます。

(ii) 語根が (母音) + (結合子音) で終わるときは、 その母音はそのままです。

(iii) 語根が a + (単子音) で終わるときは、 その a は延ばさないことがあります。

(iv) 語根が i, ī, u, ū で終わるときは、 特殊語基から使役動詞を作ります。

(v) 他の動詞も、特殊語基から使役動詞を作ることがあります。

(vi) a で終わる語根には、āpaya, āpe が付くことがあります。

語根
pac 料理するpāce, pācaya, pācāpe, pācāpaya 料理させる (i)
kar するkāre, kāraya, kārāpe, kārāpaya させる (i)
gah 取るgāhe, gāhaya, gāhāpe, gāhāpaya 取らせる (i)
mar 殺すmāre, māraya, mārāpe, mārāpaya 殺させる (i)
sam 譲歩するsame, samaya, samāpe, samāpaya 譲歩させる (iii)
gam 行くgame, gamaya 行かせる (iii); gāme も見られます
chid 切るchede, chedaya, chedāpe, chedāpaya 切らせる (i)
bhuj 食べるbhoje, bhojaya, bhojāpe, bhojāpaya 食べさせる (i)
rudh 隠すrodhe, rodhaya, rodhāpe, rodhāpaya 隠させる(i)
bhid 壊すbhede, bhedaya, bhedāpe, bhedāpaya 壊させる (i)
su 聞くsāve, sāvaya, sāvāpe, sāvāpaya 聞かせる (iv)
bhū であるbhāve, bhāvaya, ... (iv)
横になるsāye, sāyaya, sayāpe, sayāpaya 寝かせる (iv,iii)
導くnāyaya, nayāpe, nayāpaya 導かせる (iv,iii)
pucch 訊くpucchāpe, pucchāpaya 訊かせる (ii)
dhā 掴む, pi+pidhāpe, pidhāpaya 閉めさせる (vi)
pidahāpe, pidahāpaya 閉めさせる (v,ii)
与えるdāpe, dāpaya 与えさせる (vi)
ṭhā 立つṭhape, ṭhapaya 設置する (vi, a は短くなる)

二重使役

493. 語根に āpāpe を付ける、二重使役動詞というものがあります。

語根単純使役動詞二重使役動詞
pac 料理するpāce, pācāpe, ...pācāpāpe, pācāpāpaya
chid 切るchede, chedāpe, ...chedāpāpe, chedāpāpaya
bhuj 食べるbhoje, bhojāpe, ...bhojāpāpe, bhojāpāpaya

注意: 二重使役動詞の訳は、「させるようにさせる」となります。 たとえば: so purisaṁ dāsaṁ odanaṁ pācāpāpeti. 「彼は男に、奴隷に食べ物を料理させるようにさせた」 つまり「奴隷に食べ物を料理させるよう、彼は男に命じた」

この文では、最初の対格 (つまり目的語) purisaṁ は、 具格にすることができます。しばしばそうなります。

494. 使役動詞は、第一曲用第三区分 (393, 385) の i, ī で終わる動詞や、 第七活用の動詞 (379) と同じように活用します。

pac 料理する, 使役語基 pāce, pācaya, pācāpe, pācāpaya 料理させる
現在
単数
1.pācemi, pācayāmi, pācāpemi, pācāpayāmi 私は料理させる
2.pācesi, pācayasi, pācāpesi, pācāpayasi あなたは料理させる
3.pāceti, pācayati, pācāpeti, pācāpayati 彼は料理させる
複数
1.pācema, pācayāma, pācāpema, pācāpayāma 私たちは料理させる
2.pācetha, pācayatha, pācāpetha, pācāpayatha あなたたちは料理させる
3.pācenti, pācayanti, pācāpenti, pācāpayanti 彼らは料理させる
希求法
単数
1.pāceyyāmi, pācayeyyāmi, pācāpeyyāmi, pācāpayeyyāmi 私は料理させたい
2.pāceyyāsi, pācayeyyāsi, pācāpeyyāsi, pācāpayeyyāsi あなたが料理させたら良い
3.pāceyya, pācayeyya, pācāpeyya, pācāpayeyya 彼が料理させたら良い
複数
1.pāceyyāma, pācayeyyāma, pācāpeyyāma, pācāpayeyyāma 私たちは料理させたい
2.pāceyyātha, pācayeyyātha, pācāpeyyātha, pācāpayeyyātha あなたたちが料理させたら良い
3.pāceyyuṁ, pācayeyyuṁ, pācāpeyyuṁ, pācāpayeyyuṁ 彼らが料理させたら良い
などなど。

注意 (a) e, pe で終わる語基は、シグマ-アオリストの語尾を採ります (418, 419)

注意 (b) aya で終わる語基は、違う語尾を採ります (407,b)。 たとえば、pācesiṁ, pācesi, pācāpesiṁ, pācāpesipācayiṁ, pācayi, pācāpayiṁ, pācāpayi など。

使役受動動詞

495. 使役受動動詞は、使役語基の後ろに、 i (延ばされて ī になる) を介して受動の接尾辞 ya を付けることで 作ります。 そのとき、使役語基の末尾の e は脱落します。 使役受動動詞は、「(語根の意味する行動を) させられる」と訳せます。

語根単純動詞使役動詞使役受動動詞
pac 料理するpacatipācetipācīyati 料理させられる
bhuj 食べるbhuñjatibhojetibhojīyati 食べさせられる
kar するkarotikāretikārīyati させられる

注意: 連結母音 i は、短いこともあります。

496. 使役動詞の形をしていても、単に他動詞の意味で使われる動詞があります。

car 行く, 使役 cāreti 行かせる = (資産を)管理する
bhū である, 使役 bhāveti あらしめる = 育てる、訓練する

497. 第七活用の動詞は、語基に āpe, āpaya を付けて使役動詞を作ります。 そのとき、語基の末尾の母音は脱落します。

語根語基単純動詞使役動詞
cur 盗むcorecoreti, corayaticorāpeti, corāpayati
kath 告げるkathekatheti, kathayatikathāpeti, kathāpayati
tim 濡らすtemetemeti, temayatitemāpeti, temāpayati

(III) 名詞由来動詞

498. 名詞由来動詞は、名詞の語幹に何らかの接尾辞を付けて作られる動詞です。

499. 名詞由来動詞は、日本語にするといくつかの表現で言いあらわせます。 一般的に、名詞由来動詞の意味は、以下のようになります。

(a) 「(名詞の意味する事柄) として振舞う、~のようだ、~になりたい」
(b) 「~が欲しい」
(c) 「~へと変わる」
(d) 「~を使う、~を利用する」

500. 名詞由来動詞の語幹を作るのに使われる接尾辞は:

(i) āya, aya, e(ii) īya, iya
(iii) a(iv) āra, āla (この二つはまれ)
(v) āpe

501. 上の接尾辞を付けて、語幹・語基が得られたら、 次に、他の動詞と全く同じように、各時制の人称語尾を付加します。

名詞語幹名詞由来動詞
pabbatapabbatāyati 山のようにふるまう
macchara 強欲maccharāyati 強欲にふるまう
samuddasammuddāyati 海のようにふるまう
nadīnadiyiti 川のようにふるまう
araññaaraññīyati (街で)森にいるようにふるまう
dhanadhanayati, dhanāyati 富を求める
putta 息子puttīyati 息子を求める、息子のように扱う
pattapattīyati 鉢を求める
cīvara 僧衣cīvarīyati 僧衣を求める
dolā 駕籠dolāyati 自分の駕籠を欲しがる
vīṇā リュートvīṇāyati リュートを弾く
upakkama 努力、計画upakkamālati 努力する、計画を練る
gaṇa 弟子衆gaṇayati 弟子衆を求める
samodhāna 繋がりsamodhāneti 繋げる
sārajja 臆病さsārajjati 恥ずかしがる
taṇhā 切望taṇhāyati, taṇhīyati 切望する
mettaṁ 慈しみmettāyati 慈しむ
karuṇa 憐れみkaruṇāyati 憐れむ
sukha 幸せsukhāpeti 幸せにする
dukkha 苦しみdukkhāpeti 苦しませる
uṇhauṇhāpeti 温める
jaṭā もつれた髪、もつれた枝vijaṭāyati もつれを解く、梳く
pariyosāna 終わりpariyosānati 終わる

502. 名詞由来動詞は、形容詞や副詞の語幹からも作ることができます。

daḷha 固い、強いdaḷhāyati 固くする、強くする
santaṁ 良くsantarati 上手にふるまう
aṭṭa 苦しんでいる、傷ついているaṭṭayati 傷つける、苦しめる

注意 (a) 接尾辞 āra, āla は、単に aya が変化したものです。

注意 (b) 一般的ではありませんが、 名詞由来動詞を作るには、また別の方法があります。 名詞の一つめ・二つめ・三つめのいずれかの音節を畳音して、 接尾辞 īyisayisa をその語に付けます。 畳音した音節には、ui が挿入されることもありますし、 されないこともあります。(niruttidīpanī)

名詞語幹名詞由来動詞
putta 息子pupputtīyisati 息子 (のよう) になりたい
putta 息子puttittiyisati 息子 (のよう) になりたい
kamalaṁkakamalāyisati, kamamalāyisati, kamalalāyisati 花 (のよう) になりたい

注意 (c) 名詞由来動詞の使役動詞形、受動動詞形は、通常のやり方で作ります。

(IV) 願望動詞

503. 願望動詞は、その名が示すとおり、 「(単純語根の意味する事柄) をしたい、~になりたい」という意味を 表します。

504. パーリ語では、願望動詞は広くは使われません。 しかし、その作り方をしっかり学ぶ価値があるくらいには、出てきます。

505. この活用の特徴は、接尾辞 sa です。もう一つの特徴は、 (372) の規則に従って語根を畳音することです。 まず畳音規則をしっかりと読んできてください。

語根願望語基願望動詞
su 聞くsussusasussusati 聞きたがる = 耳を傾ける (33,372-7c)
bhuj 食べるbubhukkhabubhukkhati 食べたがる (86,372-5)
tij 耐えるtitikkhatitikkhati 耐え忍ぶ (86,372-7b)
ghas 食べるjighacchajighacchati 食べたがる (89,372-7a)
飲むpipāsa, pivāsapivāsati 飲みたがる (372-7a) (pivāsa は語根から)
kit 癒すcikicchacikicchati 癒したがる、手当てする (88,372-2)

506. sas は、たいていの場合同化することに注意してください。

507. 語基が得られたら、人称語尾を普通に付けます。

注意: 願望動詞の使役動詞形と受動動詞形は、普通のやり方で作ります。

(V) 強意動詞

508. 強意動詞は、反復動詞とも呼ばれます。 単純語根の意味する行動を、頻繁に繰り返す、または、 強める、という意味を表します。 強意活用の特徴は、通常の規則 (372) に従って 語根を畳音することです。

509. 強意動詞は、パーリ語ではあまり出てきません。

語根強意動詞
lap 話すlālappati, lālapati 嘆く
kam 行くcaṅkamati 歩き回る
gam 行くjaṅgamati 行き来する
cal 動くcañcalati 動き回る、震える

人称語尾は普通に付けます。

欠如動詞・不規則動詞

510.as 「である」

現在系統
現在
単数複数
1.asmi, amhi 私は…だasma, amha 私たちは…だ
2.asi あなたは…だattha あなたたちは…だ
3.atthi 彼は…だsanti 彼らは…だ
命令法
単数複数
1.asmi, amhi 私は…なれasma, amha 私たちは…なれ
2.ahi あなたは…なれattha あなたたちは…なれ
3.atthu 彼は…なれsantu 彼らは…なれ
現在分詞
能動態反射態
男性santo ~であるsamāno
女性santīsamānā
中性santaṁ samānaṁ
アオリスト
単数複数
1.āsiṁ 私は…だったāsimhā, āsimha 私たちは…だった
2.āsi あなたは…だったāsittha あなたたちは…だった
3.āsi 彼は…だったāsuṁ, āsiṁsu 彼らは…だった
条件時制
単数複数
1.assaṁ 仮に私が…ならばassāma 仮に私たちが…ならば
2.assa 仮にあなたが…ならばassatha 仮にあなたたちが…ならば
3.assa, siyā 仮に彼が…ならばassu, siyuṁ 仮に彼らが…ならば

511. 「である」 ( は語根 bhū の縮約形です)

現在系統
現在 未完了
単数複数 単数複数
1.homihoma ahuva, ahuvaṁahuvamha, ahuvamhā
2.hosihothaahuvoahuvattha
3.hotihontiahuva, ahuvāahuvu
命令法 希求法
単数複数 単数複数
1.homihoma heyyāmiheyyāma
2.hohihothaheyyāsiheyyātha
3.hotuhontuheyyaheyyuṁ
現在分詞
男性 honto女性 hontī中性 hontaṁ
アオリスト
単数複数
1.ahosiṁ, ahuṁahosimhā, ahumhā
2.ahosi ahosittha
3.ahosi, ahu ahesuṁ, ahuṁ

未来時制はすでに (436) に示しました。

不定詞動名詞未来受動分詞
hotuṁhutvāhotabbo

512.kar 「する、なす」

現在-能動態は、すでに (403) に示しました。

現在系統
現在-反射態
単数複数
1.kubbe kubbamhe, kurumhe
2.kubbase, kuruse kubbavhe, kuruvhe
3.kubbate, kurute, kubbatikubbante, kurunte
希求法-能動態
単数
1.kare, kareyya, kubbe, kubbeyya, kayirā, kayirāmi
2.kare, kareyyāsi,kubbe, kubbeyyāsi,kayirā, kayirāsi
3.kare, kareyya, kubbe, kubbeyya, kayirā
複数
1.kareyyāma, kubbeyyāma, kayirāma
2.kareyyātha, kubbetha, kayirātha
3.kareyyuṁ, kubbeyyuṁ, kayiruṁ
未完了
能動態 反射態
単数複数 単数複数
1.akara, akaraṁakaramhā akariṁ akaramhase
2.akaro akaratthaakarase akaravhaṁ
3.akara akaru akaratthaakaratthuṁ
命令法
能動態 反射態
単数複数 単数複数
1.karomi karoma kubbe kubbāmase
2.kuru, karohi karotha kurussukuruvho
3.karotu, kurutukarontu, kubbantukurutaṁkubbantaṁ

アオリストは (412) で示しました。

未来
-ssāmi (karissāmi, karissasi など) の形の普通の未来形の他、 (436) に挙げた形もあります。
現在分詞
能動態反射態
男性karaṁ, karonto karamāno, kurumāno, karāno, kubbāno
女性karontī karamānā, kurumānā, karānā, kubbānā
中性karaṁ, karontaṁkaramānaṁ, kurumānaṁ, karānaṁ, kubbānaṁ
未来受動分詞
kattabbo, kātabbo, kāriyo, kayiro, kayyo, karaṇīyo

注意: yira で終わる形は、全て音位転移でできたものです。 kayyo では、r が同化しています。

受動語基
受動語基にはいくつかの形があります: karīya, kariyya, kariya, kayira
受動動詞の現在分詞
karīyamāno, kariyyamāno, kayīramāno, kariyamāno

513. 「与える」

現在、希求法、命令法は、(395) ですでに示しました。 いくつかの時制が、語根から直接作られることに注意してください: 語根アオリスト、シグマ-アオリスト、未来、条件、です。

語根アオリスト シグマ-アオリスト
単数複数 単数複数
1.adaṁadamhā adāsiṁadāsimhā
2.ado adattha adāsi adāsittha
3.ada adaṁsu, aduṁadāsi adāsuṁ, adāsiṁsu
未来
(a) 語基から (b) 語根から
単数複数 単数複数
1.dadissāmidadissāma dassāmidassāma
2.dadissasidadissathadassasidassatha
3.dadissatidadissantidassatidassanti
条件
単数複数
1.adassaṁadassamhā
2.adasse adassatha
3.adassā adassaṁsu
分詞 (男性形)
現在分詞受動完了分詞完了分詞-能動態
dadaṁ, dadantodinnodinnavā
未来分詞未来受動分詞
dadassaṁ dātabbo
dadassantodāyo
現在分詞-反射態
dadamānodadamānādadamānaṁ

動詞接頭辞

514. 接頭辞、あるいは前置詞、パーリ語では upasagga (23,注意) と呼ばれるものは、 動詞や動詞から派生した語の前に付されます。 そのため、動詞接頭辞とも呼ばれます。 一般的に、動詞接頭辞は、語根の意味に修正を加えたり、 強調したり、時には全く違う意味に変えたりします。 多くの場合は、語根の元々の意味に少し変更が加わるだけです。

515. これらの接頭辞を動詞の前に付けるとき、 通常の連声規則が適用されます。 加音 a の付く時制形の前に接頭辞を付けるときは、 その加音の場所を変えてはいけません。 加音は、接頭辞と語根の間に残ります: agā + ati-accagā (74,i)。aatigā ではありません。

516. 動詞接頭辞には以下のようなものがあります。

ā: へ、で、に向かって、の近くに、までに、の限り、 から離れて、じゅうに。

kaḍḍh 曳く、引く → ākaḍḍhati ~に向かって引いていく、引き去る
kir 注ぐ、撒く → ākirati 撒きちらす、満たす
cikkh 示す、告げる → ācikkhati 指摘する、~に話しかける
chad 覆う → acchādeti 全体を覆う、服を着る (33,35)

注意: この接頭辞は、語根の意味を逆転させることがあります:

与える ⇔ ādāti 取る
gam 行く, 語基 gacchaāgacchati 来る

ati (母音の前では acc) 超えて、横切って、上に、 過ぎ去って、非常に、とても (超過を表します)。

kam 歩む → atikkamati (33) 踏み越える、渡る、行き去る、逃げる、 克服する、制限を超える、抜きんでる、経過する
導く → atineti ~の向こうに導く、水を引く
car 行う → aticarati やりすぎる、制限を超える

adhi: (母音の前では ajjh) 上に、で、に、より優れて、偉大な。 (優れていることを意味することがあります)。

vas 住む → adhivasati ~に住む
gam 行く → ajjhagamā 彼は近づいた (← adhi + 加音 a + gamā (アオリスト))
bhās 話す → adhibhāsati ~に話しかける

anu: ~にちなんで、に沿って、にしたがって、の近くで、の後ろで、 ~より少なく、~の結果、~の下で

kar する → anukaroti ~を真似る
kam 行く → anukkamati ~に付いて行く
dhāv 走る → anudhāvati ~を追う
gah 取る → anugaṇhāti 近くに取る = 守る

apa: ~から離れて。損傷や崇敬を意味することもあります。

ci 気付く、観察する → apacāyati 尊敬する、apaciti 崇敬
導く → apaneti 導き去る = 取り去る
gam 行く → apagacchati 去る
man 考える → apamaññati 軽蔑する

api ~の上へ、近くに。 この接頭辞が使われるのは非常にまれです。 以下の語根に付くのがほとんどです: √dhā (置く)、√nah (縛る)。 さらに、ほとんどの場合短くなって pi の形で出てきます。

dhā 置く → pidahati 覆う、閉める。apidhānaṁ, pidahanaṁ, pidhānaṁ 覆い。
nah 縛る → pinayhati 結び付ける。

abhi (母音の前では abbh): ~に、~に向かって、~に対して、 ~の向きに。超過、崇敬、特殊性を意味することもあります。

gam 行く → abhigacchati ~に向かっていく、近づく
kaṅkh 欲する → abhikaṅkhati 特に欲する、待ち焦がれる、切望する
jal 燃える → abhijalati あまりに燃える、激しく燃える
vand 挨拶する → abhivandati うやうやしく挨拶する

ava: 下に、離れて、戻って、外れて、少なく。 軽視を意味することもあります。

注意: ava はしばしば縮約されて o となります。

知る → avajānāti 軽蔑する
har 取る → avaharati 取り去る、avahāro 取り去ること
khip 投げる → avakhipati 投げ落とす
lok, luk 見る → oloketi, avaloketi 見おろす

ud (= ネイティブの文法学者の言う u です。d は後ろに続く子音と同化するためです (58,60,62,65)。h が続くときは、末尾の d が脱落して u が長くなることもあります): 上方に、上に、昇って、前へ。

khip 投げる → ukkhipati 投げあげる、取り除く。ukkhepanaṁ 停職処分
chid 切る → ucchindati 切り取る
ṭhā 立つ → uṭṭhahati 立ちあがる、起床する。uṭṭhānaṁ 起床
har 取る → uddharati (96) 引き出す、uddharaṇaṁ 引っぱり出すこと

注意: ud は、動詞の意味を逆転させる場合が、少数あります。

pat 落ちる → uppatati 跳び上がる
nam 曲げる → unnamati 昇る、登る

upa: ~に、~に向かって、近くに、~と一緒に、~のそばで、~のように、 ~まで、(apa と逆に) 下に、少なく。

kaḍḍh 引きずる → upakaḍḍhati ~に向かって引きずる、引きずり下げる
kar する → upakaroti ~に向かってする = 助ける、upakāro 助け、 upakaraṇaṁ 道具 (= 一緒に行うところのもの)
kam 歩む、行く → upakkamati 攻撃する (= 向かっていく)

ni (時に延ばされて 、母音の前では nir): 外に、前へ、下に、中に、下方に、中で、下で

kam 行く → nikkhamati 出る、出発する
dhā 置く → nidahati, nidheti 貯蓄する、(宝を)隠す
har 取る → nīharati 持ち出す
han 打つ → nīhanti 打ち倒す

pa: 前方へ、前へ、前面に、向かって、から。始動を意味します。

bhā 輝く → pabhāti 輝きを放つ、夜が明ける。pabhā 輝き
bhū である → pabhavati なり始める = 生じる
jal 燃える → pajjalati 燃えさかる

pati, paṭi: 反対に、戻して、逆方向に、戻って、返して、 向かって、近くに。

bhās 話す → paṭibhāsati 返答する
khip 投げる → paṭikkhipati 拒絶する、paṭikkhepo 拒絶
kam 歩む → paṭikkamati 後退する

parā: 離れて、戻って、逆に、外れて、上に

kam 行く → parakkamati 努力する
ji 勝つ → parājeti 克服する

pari: ~の周りに、~のあたりに、~じゅうに、全て。 完全性などを意味します。

car 歩く → paricarati 周りを歩く = 仕える、尊敬する、 paricāro 服侍、paricca 囲んで (← pari + i + tya)
chid 切る → paricchindati ぐるっと切り取る、制限する、定義する
dhāv 走る → paridhāvati 走り回る
知る → parijānāti 完璧に知る

vi: ばらばらに、離れて、~なしに。 分離、相違、分散を意味します。

chid 切る → vicchindati ばらばらに切る、中止する、中断する
知る → vijānāti 識別する、vijānaṁ 識別
kir 撒く → vikirati まき散らす、広げる

sam: 一緒に、沿って、充分に、完全に。

bhuj 食べる → sambhuñjati ~と一緒に食べる
vas 住む → saṁvasati 一緒に住む、saṁvāso 同居

注意: 上の接頭辞が、二つ、時に三つ、組み合わさることがありますので、 注意してください。よく出てくる組み合わせを以下に挙げます。

vyā (byā と書かれる) (= vi + ā): vyākaroti 説明する (√kar)。 vyāpajjati 誤る (√pad 行く)。

ajjho (= adhi + o, o = ava): ajjhottharati 覆いつくす (√thar 広がる)。

ajjhā (=adhi + ā): ajjhāvasati ~に住む (√vas)。 ajjhāseti ~の上に横になる (√)。

anupa (= anu + pa): anupakkhādati 浸食する (√khād)。 anupabbajati 世を捨てる (√vaj 行く)。

anupari (= anu + pari): anuparidhāvati 走って行き来する (√dhāv)。 anupariyāti 巡り巡る (√)

anusam (= anu + sam): anusaṅgito 一緒に詠唱された。 anusañcarati 渡る。

samud (= sam + ud): samukkaṁsati 称賛する。 samucchindati 根絶する (√chid)。 samudeti 昇る (√i)。

samudā (= sam + ud + ā): samudācarati 話しかける、練習する (√car)。 samudāhaṭo 生み出された (√har)。 samudāgamo 始まり (√gam)。

samupa (= sam + upa): samupeti 近づく (√i)。 samupagacchati 近づく。

samā (= sam + ā): samāharati 集める (√har)。 samāgamo 集まり (√gam)。

samabhi (= sam + abhi): samabhisiñcati (頭に水を)撒く = 灌頂する (戴冠の儀式) (√siñc)。

upasam (= upa + sam): upasaṁharati 集める (√har)。 upasaṁvasati ~に住む (√vas 住む)。

注意: 他の組み合わせに行きあたることもあります。 その語の一般的な意味は、組み合わさった接頭辞の意味から 必ずたどれます。

517. 接頭辞、つまり前置詞は、動詞だけでなく、 動詞の派生語、名詞、形容詞と一緒に使われることもありますので注意してください: anutīre (土手に沿って)、 adhicittaṁ (高尚な考え)、 abhinīlo 真っ黒な。

518. pari は、pali と書かれることもよくあります (72)。

519. pari, vi, sam は、語根の意味を強めるだけの場合が 非常に多いです。

520. 接頭辞 sam, upa, parā, pari や、単語 pura (前に) に √kar が続くとき、√karkhar という形になることが時々あります: purakkharoti (前に置く = 従う) ← pura + √karparikkhāro (取り囲むもの = 日用品) ← pari + √kar

521. 動詞接頭辞と同じように使われる副詞が少数あります。 しかし、その副詞の付くことができる動詞は、いくつかに限られます。 以下のようにです。

āvi: 完全に目の前に、見えて、明らかに。 これは bhavati (√bhū), karoti (√kar) の前に付きます。 例: āvibhavati (明白になる、現れる), āvikaroti (明白にする、明らかにする、説明する、証明する)

antara: ~の間で、~の中で。 √dhā (置く) とともに使われます。 例: antaradhāyati (消える、姿を消す), antaradhāpeti (消す、姿を消させる)

atthaṁ (副詞・名詞): 家へ、姿を消して、沈んで。 行く、という意味の動詞とともに用いられて、 「(月や太陽や星が)沈む」という意味を表します。 gacchati, eti (√i) (行く) と一緒に使われることがほとんどです。 例: atthaṅgacchati (消える、沈む), atthameti ((太陽が)沈む)

pātu (母音の前では pātur): 前へ現れて、明らかに。 bhavati, karoti とともに使われます。例: pātubhavati (明らかになる、現れる), pātubhāvo (出現); pātukaroti (明白にする、明らかにする、生じさせる)

pura: 前で、前に。 karoti と一緒に使われるのがほとんどです。 例: purakkharoti (520) (前に置く、(自分の)指導者とする、従う、崇敬する)

alaṁ: ふさわしく。 karoti と一緒に用いられて、装飾することを意味します。 例: alaṅkaroti (飾る、装飾する)

tiro: 見えなくなって、渡って、超えて。 √kar,dhā の前に付けて、覆う、隠す、などを意味します。 例: tirodhāpeti (ベールで覆う、覆う、見えなくする), tirodhānaṁ (覆い、ベール); tirokaroti (ベールで覆う、隠す), tirokaraṇī (覆い、ベール)

522. 接頭辞 du, su は、動詞とともに用いられることはありません (「副詞」の章を参照)。 また、接頭辞 a (an) が動詞とともに用いられることは 非常にまれです。

523. 最後に、動詞の完全な変化表を記して、この章を終えます。

pac 料理する

現在系統 (語幹 paca)
現在: 料理する
能動態反射態
単数複数単数複数
1.pacāmipacāmapacepacāmhe
2.pacasipacathapacasepacavhe
3.pacatipacantipacatepacante, pacare
未完了: 料理した
能動態反射態
単数複数単数複数
1.apaca, apacaṁapacamhā, apacamhaapaciṁapacāmhase, apacamhase
2.apacoapacatthaapacaseapacavhaṁ
3.apacaapacuapacatthaapacatthuṁ
命令法: 料理しろ、させろ
能動態反射態
単数複数単数複数
1.pacāmipacāmapacepacāmase
2.pacāhi, pacapacathapacassupacavho
3.pacatupacantupacataṁpacantaṁ
希求法: 料理するべし
能動態反射態
単数複数単数複数
1.paceyyāmi, pacepaceyyāmapaceyyaṁpaceyyāmhe
2.paceyyāsi, pacepaceyyāthapacethopaceyyavho
3.paceyya, pacepaceyyuṁpacethapaceraṁ
現在分詞
能動態反射態
男性 pacaṁ pacamāno
pacanto pacāno
女性 pacatī pacamānā
pacantī pacānā
中性 pacaṁ pacamānaṁ
pacantaṁ pacānaṁ
アオリスト系統 (語幹 pac)
アオリスト: 料理した
能動態反射態
単数複数単数複数
1.apaciṁapacimhāapacaapacimhe
2.apaciapacitthaapaciseapacivhaṁ
3.apaci, apacīapacuṁ, apaciṁsuapacā, apacūapacuṁ, apaciṁsu
注意: 加音 a は、ないことがあります。
完了系統 (語幹 papac)
完了: 料理した
能動態反射態
単数複数単数複数
1.papacapapacimha papaci papacimhe
2.papacepapacitthapapacitthopapacivho
3.papacapapacu papacitthapapacire
完了分詞: 料理した
能動態反射態
男性pacitavā pacitavā
pacitavanto pacitavanto
pacitāvī pacitāvī
女性pacitavatī pacitavatī
pacitavantī pacitavantī
pacitāvinī pacitāvinī
中性pacitavaṁ pacitavaṁ
pacitavantaṁpacitavantaṁ
pacitāvi pacitāvi
注意: 完了分詞の能動態と反射態は同形です (作り方は (465) を見てください)。
未来系統 (語幹 pacissa)
未来: 料理するだろう
能動態反射態
単数複数単数複数
1.pacissāmipacissāma pacissaṁ pacissāmhe
2.pacissasipacissathapacissasepacissavhe
3.pacissatipacissantipacissatepacissante
条件: 仮に料理するならば
能動態反射態
単数複数単数複数
1.apacissaṁapacissamhāapacissaṁ apacissāmhase
2.apacisse apacissathaapacissase apacissavhe
3.apacissā apacissaṁsuapacissathaapacissiṁsu
未来分詞
能動態反射態
男性 pacissaṁ pacissamāno
pacissanto pacissāno
女性 pacissatī pacissamānā
pacissantī pacissānā
中性 pacissaṁ pacissamānaṁ
pacissantaṁpacissānaṁ
不定詞pacituṁ
動名詞pacitvā, pacitvāna, pacitūna, paciya
未来受動分詞pacitabba, pacanīya
受動完了分詞pacita

524.cur (盗む) の変化表: 語基 coraya, core

現在系統 (能動態)
現在
(1) 語基 coraya から(2) 語基 core から
単数複数単数複数
1.corayāmicorayāma coremicorema
2.corayasicorayathacoresicoretha
3.corayaticorayanticoreticorenti
未完了 (coraya からのみ)
単数複数
1.acoraya, acorayaṁacorayamhā, acorayamha
2.acorayo acorayattha
3.acoraya acorayu
命令法
(1) 語基 coraya(2) 語基 core
単数複数単数複数
1.corayāmicorayāma coremicorema
2.corayāhicorayathacorehicoretha
3.corayatucorayantucoretucorentu
希求法
(1) 語基 coraya(2) 語基 core
単数複数単数複数
1.corayeyyāmi corayeyyāma coreyyāmicoreyyāma
2.corayeyyāsi corayeyyāthacoreyyāsicoreyyātha
3.corayeyya, corayecorayeyyuṁ coreyya coreyyuṁ
現在分詞
(1) 語基 coraya(2) 語基 core
男性 corayaṁ, corayanto corento
女性 corayatī, corayantī corentī
中性 corayaṁ, corayantaṁcorentaṁ
アオリスト系統
アオリスト
(1) 語基 coraya(2) 語基 core
単数複数単数複数
1.corayiṁcorayimhā, corayimhacoresiṁcoresimhā, coresimha
2.corayi corayittha coresi coresittha
3.corayi corayuṁ, corayiṁsu coresi coresuṁ, coresiṁsu
完了系統
(これらの動詞の完了時制は普通見られません。ですが、 出てくるとすれば cucora, cucore, cucorimha などです)
完了分詞-能動態
(1) 語基 coraya(2) 語基 core
男性corayitavā coritavā
corayitavanto coritavanto
corayitāvī coritāvī
女性corayitavatī coritavatī
corayitavantī coritavantī
corayitāvinī coritāvinī
中性corayitavaṁ coritavaṁ
corayitavantaṁcoritavantaṁ
corayitāvi coritāvi
未来系統
未来
(1) 語基 coraya(2) 語基 core
単数複数単数複数
1.corayissāmicorayissāma coressāmicoressāma
2.corayissasicorayissathacoressasicoressatha
3.corayissaticorayissanticoressaticoressanti
条件
単数複数
1.acorayissaṁacorayissamhā
2.acorayisse acorayissatha
3.acorayissā acorayissaṁsu
未来分詞-能動態
(1) 語基 coraya(2) 語基 core
男性 corayissaṁ coressaṁ
corayissanto coressanto
女性 corayissatī coressatī
corayissantī coressantī
中性 corayissaṁ coressaṁ
corayissantaṁcoressantaṁ
現在分詞-反射態
男性corayamāno, corayāno
女性corayamānā, corayānā
中性corayamānaṁ, corayānaṁ
不定詞corayituṁ, coretuṁ
動名詞corayitvā, coretvā
未来受動分詞corayitabbo, coretabbo
受動完了分詞corito, coritā, coritaṁ

525. 反射態は難しくありません。-aya の形の語基から作られるのが一般的です。

反射態
現在未完了
単数複数単数複数
1.coraye corayāmheacorayaṁ acorayāmhase
2.corayasecorayavheacorayase acorayavhaṁ
3.corayatecorayanteacorayatthaacorayatthuṁ

受動態

526. 受動態は、通常通り、語基に i (長くなって ī となる) を介して ya を付加する方法で作ります。 そのとき、語基の末尾の母音は、後ろに ī が続くことで落ちます。

現在
単数複数
1.corīyāmi 私は盗まれた corīyāma 私たちは盗まれた
2.corīyasi あなたは盗まれたcorīyatha あなたたちは盗まれた
3.corīyati 彼は盗まれた corīyanti 彼らは盗まれた
他の時制も同様です。

527. 使役動詞と名詞由来動詞は、coreti と全く同じに活用します。

528. 動詞の主要形に起きる変化を、わかりやすいようにまとめると、 以下のようになります。

語根特殊語基能動態反射態受動動詞使役動詞使役受動動詞
pac
料理する
pacapacatipacatepaccate
paccati
pāceti
pācayati
pācāpeti
pācāpayati
pācīyati
pācāpīyati

与える
dadādadātidadatedīyate
dīyati
dāpeti
dāpayati
dāpīyati

導く
ne
naya
neti
nayati
nayatenīyate
nīyati
niyyati
nāyayati
nayāpeti
nayāpayati
nayāpīyati
han
殺す
hanahanati
hanti
hanatehaññate
haññati
haneti
hanayati
hanāpeti
hanāpayati
hanāpīyati
hanayīyati
khād
食べる
khādakhādatikhādatekhajjate
khajjati
khādeti
khādayati
khādāpeti
khādāpayati
khādāpīyati
khādayīyati
lu
切る
lunālunātilunatelūyate
lūyati
lāveti
lāvayati
lāvīyati
bhū
である
bhavabhavatibhavatebhūyate
bhūyati
bhāveti
bhāvayati
bhāvāpeti
bhāvāpayati
bhāvīyati
labh
得る
labhalabhatilabhatelabbhate
labbhati
labbheti
labbhayati
labhāpeti
labhāpayati
labhāpīyati
su
聞く
suṇā
suṇo
suṇāti
suṇoti
suṇatesūyate
sūyati
sāveti
suṇāpeti
sāvīyati
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